イメチェンしても中身は一緒（五条） ページ16
「A、それ……」
「ん？それ？」
硝子はAが片手に持っているもののことを指しているのだと言うことはわかった。そいつのせいで教室が少し煙てぇ。
硝子にタバコやめろって言ってたのはどこのどいつだよ。
だが、不思議とそれはタバコのように思わず咳き込みそうになる煙を発していなかった。
「教室に煙が充満してんだけど」
「あぁ……これか」
Aが煙管を顔の前に持ち出した。今までそんなものは持っていなかったはずだ。
「悪友の忘れもんだよ」
煙管を見るAの顔は慈しむような顔だった。
忘れ物、と言うことはこの前の片目包帯のあの男が忘れていったものなのだろうか。
煙管を持って白い息を吐き出すAは、いつもはない色気があるように感じた。
まぁ、9割9分あの煙管のせいだ。
「煙管…………ちょっと吸ってみてもいい？」
「んー……悪いがこれは硝子にも譲れんな」
「そっかー」
そう言って煙管を燻らすAは、俺たちの手の届かない大人に見えた。
煙管持ってるだけでちゃらんぽらんに変わりはねぇのに。
一年が入ってきたことで、Aが俺たちの自習を担当する機会も少し減った。
任務の送迎は、かなり減った。
だが、一年には送迎にも自習にも、Aが行ってるらしい。
Aが自習の監督に来た時にはよく、一年坊は俺たちとは違って、とペラペラ喋りやがる。
「最近、Aさんなんか色気増した気がする」
「確かに。喫煙始めてからなんか妖しい色気が増したっていうか……もしかして彼氏でも、」
廊下ですれ違った補佐監督達が俺と目があって会話をやめた。なんだよ、話しとけよ。
Aの色気が増したと言うのは補佐監督達も同じく感じていたようだ。
たまーに俺らの送迎に就く、A大好き補佐監督曰く、“もはや抱かれたい”そうだ。
やめとけ、あいつだけは。
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作者名：フルーツパンチ侍 | 作成日時：2023年9月14日 12時
