15 第3章-三日月の涙- ページ16
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その日、二年生4人はそれぞれ別の任務に当たっていた。任務が終わり次第Aと合流することになっていた夏油から、1級の任務に派遣されたはずのAが特級呪霊の出現により危険な状態だと連絡を受け、五条が現場に着いた時にはAは既に虫の息だった。
仰向けで横になっているAの頭には、
夏油のものと思われる制服のジャケットが畳んで敷かれている。
「……A」
当の夏油は気を使ってくれたのか、五条が到着するなりその場を離れてしまった。
月は雲で隠れており、辺りは暗い。
Aの傍へ寄りしゃがみ込むと、紺色の制服の脇腹が黒く染まっているのがわかった。
制服を濡らしいてるそれは、地面にも大きな染みを作り傷の深さを思わせた。
「A」
もう一度名前を呼ぶと、
うっすらと瞼を押し上げたA。
『……さ、とる』
小さく息を吸った後、
普段より何倍もか細い声で自分の名前を呼ばれた。
Aの上半身を起こし抱える。
「早く高専戻るぞ。硝子が戻ってくれば」
膝の裏に腕を回して小さな身体を持ち上げようとしたところで、Aの手が五条の制服を引いて動きを制した。
『いいの……もう、間に合わない』
「そんなの分かんねェだろ」
『…わかるよ……自分の、ことだから』
「……ふざけんなよ」
反転術式が他人に使えない自分をこれほど憎んだことはない。何も出来ない不甲斐なさに拳を強く握り締める。
『怒らないでよ…』
悔しそうな顔をした五条を見上げ、
Aは力なく笑いを零した。
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yumenushihashoko(プロフ) - 早く続きが読みたいです(^^) (2022年5月7日 15時) (レス) @page21 id: f956c23c96 (このIDを非表示/違反報告)
月夜 - この題名は、、東方、、 (2021年7月30日 22時) (レス) id: 0e4ab80c46 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あんパん | 作成日時:2021年7月1日 16時