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じわじわと ページ19

「五条先輩、明日帰って来るんですよね」
『ああ。夕方ぐらいかな、高専に着くのは。お前は、明日任務だっけ?』
「はい。私も、高専に戻れるのは先輩と同じくらいですかね」
『着く頃連絡しろよ。迎え行くから』


それに「はい」と頷きながら返すと、五条先輩は満足そうに「よし」と言った。「じゃあ、またな」と告げる声は優しい。


通話を切ると途端に部屋が静かになった気がしたけれど、明日になれば会えるんだ。大丈夫。


大丈夫。五条先輩は、きっと無事に帰って来る。



―――けど、どうしてだろう。


いまだに、胸がざわざわして落ち着かないのは。





「うぅ…疲れた…」


翌日。お昼もとうに過ぎ、時刻は15時を迎えようとしている頃。


私は任務で疲れた上に長いこと電車に揺られて疲れた身体を何とか動かし、高専に向かっている。


高専は山奥にあるため、途中の道のりも上り坂ばかり。自然と腰が曲がり、項垂れるような姿勢で歩く。きっとそれがいけなかった。下ばかり向いていたせいで、前に人がいることに気がつかなかった。


「わ」


どん、と誰かにぶつかってしまい、ごろんと後ろに転がって尻餅をついてしまった。「すみません!」と言いながら慌てて顔を上げると、私がぶつかったであろうその人はゆっくりとこちらを振り向き、地べたに転がっている私を見下ろす。


「…あ?」


鋭い目つきをした、黒髪の男の人。整った顔立ちをしているが、口元に傷。興味がなさそうな視線を私に向けるその姿は、機嫌が悪い時の五条先輩みたいで少し怖い。


「す…すみません!よそ見してて…!」


「骨折れたわ。慰謝料よこせよ」と言われるのを覚悟でもう一度謝ると、彼は無表情のまま膝を折り、私に手を差し伸べる。


「いや、こっちこそ悪かったな。考え事してた」


大人しくその手を掴んで立ち上がり、ありがとうございます、とお礼を言う。それに軽く返事をして、彼は「じゃあな」とひらりと手を振りながら去って行った。


考え事って、これから何か大事な用でもあるのだろうか。とはいえ、彼が進んで行った先には見渡す限りの森と、高専しかない。


…こんなこと考えたってしょうがない。とにかく高専へ戻ろう。そうため息をついて、私は立ち止まったせいでさらに重くなった足を引きずるようにして、高専へと急いだ。




この坂を上ったら、五条先輩に会える。


そのはずなのに、何だろう。


―――じわじわと闇に追いかけられているような、この嫌な気持ちは。

来るな→←世界はそれを



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つく(プロフ) - のみさん» のみ先生ありがとうございます…!のみ先生からの励まし、とても力になりました。今後ともよろしくお願いいたします…! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - へかーてぃあ@夢見月*小夜セコム隊さん» オワァ!最初から読んでいただいてありがとうございます…!続編についてもいつか公開すると思いますので、また楽しんでいただけるよう頑張ります! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - 晩鶴紫呉さん» ありがとうございます〜!続編についてもぽちぽち書き進めている最中ですので、いずれ公開します! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - はにゃさん» ありがとうございます!続編もいずれ公開されると思いますので、その際はよろしくお願いします〜! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - 五音さん» コメントありがとうございます!続編については制作中ですので、ある程度アップできる状態になったら公開しようと思います〜! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:つく | 作成日時:2021年1月16日 1時

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