世界はそれを ページ18
『俺、生まれつき最強だからさ。そんな心配されたことないんだよね。物心ついた時から俺の賞金額は億超えてたし、周りのヤツは揃いも揃って、俺を"六眼持ちの五条家のガキ"っていうくくりでしか見てなかったしさぁ』
風が強くなってきたのか、五条先輩の声の向こうで、ざぁ、という波の音がしきりに入る。そのせいか少し声を張り上げて喋る五条先輩の声が、何だか強がっているように聞こえてしまって。
私はしばらくの間黙っていたけれど、浅く息を吸いこんで、先輩に告げた。
「…五条先輩はちょっと人より強いだけの、ただの人間ですよ」
うん、と小さく呟く先輩。
「だから…無茶しないで。無事に、帰って来てくださいね。私、待ってますから」
きっとこれは、最強に言う台詞じゃない。でも何だか、言っておきたかったのだ。五条先輩は何でもできるし、私なんかよりもたくさんのことを知ってて、頭もいい。五条先輩は確かに特別で、他の人とは違うけど、それでも。
世界中の何を犠牲にしても、いなくなって欲しくない。
そう思ってしまうくらい、私は五条先輩のことが好き。
愛ほど歪んだ呪いはない。この残酷な気持ちが愛じゃないのなら、他に何と言うのがふさわしいのだろう。
『…ありがとな、宮井』
ひどく穏やかな声で、五条先輩が言った。全然うまく伝えられた気がしないけど、私の思いの少しでも、先輩に伝わっただろうか。…伝わっていれば、いいけれど。
『絶対無事に帰ってやるから、待ってろ。約束な』
もう何度目かの、約束。驚くことに、五条先輩は今まで、約束を破ったことがない。今回みたいにデートをすっぽかされたりした時も、後日必ず埋め合わせをしてくれる。
俺、約束は絶対守るから。これが五条先輩の口癖。出会った頃に言われたその言葉を、五条先輩は今でも守り続けている。
だからきっと、今回も―――きっと、五条先輩は無事に帰ってくる。
そう信じて、私は「はい」と頷いた。
「約束ですよ」と、付け足して。
746人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
つく(プロフ) - のみさん» のみ先生ありがとうございます…!のみ先生からの励まし、とても力になりました。今後ともよろしくお願いいたします…! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - へかーてぃあ@夢見月*小夜セコム隊さん» オワァ!最初から読んでいただいてありがとうございます…!続編についてもいつか公開すると思いますので、また楽しんでいただけるよう頑張ります! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - 晩鶴紫呉さん» ありがとうございます〜!続編についてもぽちぽち書き進めている最中ですので、いずれ公開します! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - はにゃさん» ありがとうございます!続編もいずれ公開されると思いますので、その際はよろしくお願いします〜! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - 五音さん» コメントありがとうございます!続編については制作中ですので、ある程度アップできる状態になったら公開しようと思います〜! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:つく | 作成日時:2021年1月16日 1時