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｢唯桜様…！そのようなことはありません、あれは元々脆弱で｣
｢脆弱だったからこそ、私が死を早めてしまったんだ。呉服屋殿が毒に耐えられるはずもないのに｣
唯桜の遺言通り大切に保管された裁縫道具と打掛は多少の劣化こそあれど見事にこの数百年を耐え抜いた。
この打掛もそうだが あの腕は国宝そのものだったと唯桜は思う。
それを自分は潰えさせてしまったと。
｢どうかそう思わないでください｣
｢……うん｣
未だ吹き込まれた命の消えぬこの打掛は、説明の下の方には｢最後の糸を切り終えたところで死んでいたらしい｣と記されている。
まるで霸桜の命を削ったようだ。命と引き換えに仕立てた、最高の。
｢……わぁ、懐かしいねえ。魂の片割れだ｣
道具まで取ってある、と嬉しそうで細く儚い声がする。唯桜がぎこちなく隣を見れば霸桜その人が立っていた。
前よりも細くなってしまっているように見える。服が丈は合っているのにやけにぶかぶかだ。
｢先生、外出許可をありがとう……これだけは見たかったんだ｣
｢最近体調がいいですもんね 気分転換だって必要ですよ
もう少し見たらどうです？俺も見たいですし｣
｢いいのかい？｣
嬉しいなぁ、と笑ってもっとショーウインドウに寄る。
自分と同い年だろうか。あの美しい見目をどう見間違えようか。
｢…呉服屋、殿｣
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作者名：クヴァール&くろのちか x他1人 | 作者ホームページ：なし
作成日時：2018年7月1日 20時
