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「大丈夫?」
指定校の面接練習が終わって帰る時
突然話しかけてきた赤司先生
今まで大して話したことも
気にかけたことも無いくせに
私の感情の機微を察知して
馴れ馴れしく心配してるフリをされた
ころっと騙されたのは
まあ私なんだけど
そのあと身体の関係になる一歩を踏み出すか踏み出さないかは多分私も抵抗できたはず
できたのにしなかったのは
迫られてる時の独特の空気が怖かったのもあるけど
それ以上に期待の方が大きかったと思う
身体を重ねるごとに自分の中の大切な何かが
削れていくような感覚に襲われた
行為中の赤司先生は人格が変わる
錯覚じゃなくて多分これは確信
もしかしたら精神障害なのかもしれない
だけど誰に話せるわけでもなく
この恐怖は自分の中で消化するしか無い
首を絞められてあの冷たい目で見つめられると
このまま死んじゃうのかと思った
だけどもう戻れない
薬指の指輪に気付いても、戻れない
きっと奥さんは私より幸せだと思った
だから許して欲しい
こんな惨めな私を
こんなクズにしか、愛して貰えない私を
行為が終わっても、赤司先生の人格は戻らない
ぐちゃぐちゃになった私をそのまま投げ捨てて
どこかへ消えていく
「先生、さようなら」
さようなら
明日からはまた普通に先生と生徒
それどころか私は生徒にすら慣れていない
私は所詮ただのラブドール
奥さんには吐き出せない鬱憤を
私で晴らしているだけ
それに気付いてるのに
こんなにも苦しいのに
苦しい方がいい
孤独でいた前よりも
今の方が充実しているから
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作者名:黄瀬しか勝たん | 作成日時:2020年10月11日 4時