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夢主は料理ができない ページ5

久々の休日の昼前。
私服の上からエプロンを着用したAはひとり学生寮のキッチンに仁王立ちしていた。

コツコツと時計の秒針が動く音がキッチンに鳴り響く。

緩慢とした動作でAの手が自身の腰に付けられたホルスターからナイフを抜き取る。
彼女の相棒と同じ乳白色の刃がキラリと光を反射する。
日頃からよく手入れされていることがよくわかるそのナイフは、彼女の意のままにたちまち獲物を両断することだろう。

ゆっくりとその腕が振り上げられる。
数秒の静寂の末、彼女が目の前の獲物に狙いを定めた瞬間。
空気を切り裂きながら、キラリと輝くナイフが振り下ろされ―――


「ストオオオオオオオップ!!!!!」


間一髪、ナイフの刃先が獲物の面に当たる直前。
ピタリと彼女の手がその声と共に静止した。

Aの目が獲物から外れ、声のした方向に向けられる。


「どうしたの?悠仁くん」

「どうしたのじゃねーよA先輩、今何しようとしてたの!?」

「何って…」


キョトンとした顔で自身の挙動を制止した声の主、虎杖を見つめるA。
その視線がゆっくりと彼女の目の前、使い込まれたまな板の上に戻されるのを虎杖もその目で追う。


「ジャガイモ…」

「いつも常備してる冷凍食品切れてて、今日は真希もいないから自分で作ろうと思ったの」

「な、なんだ…ただ昼飯作ろうとしてただけか…」


ホッと息を吐いたつかの間、虎杖の後ろからひょっこりと二つの人影がキッチンに顔を出す。


「うるせーよ虎杖、早く昼飯作れや」

「いや、キッチンでA先輩がナイフ振り上げてたから何事かと思って」


キッチンに姿を現したのは伏黒と釘崎。
どうやら彼らも昼食を食べに食堂に出向いたようだ。


「珍しいすね、枸雅先輩がキッチンに立ってるの。いつも真希さんとか狗巻先輩が作って一緒に食ってませんか?」

「二年の皆、今日は任務でいないんだ」

「じゃあAさん一人?なら一緒に食べましょ。私、Aさんの料理食べてみたいし」

「うん、上手に作れるかわからないけど…」


改めてジャガイモに向き直るAに虎杖が何気なく質問を投げかける。


「何作ろうとしてたの?」

「えっと、炒飯」

「チャーハン…?」


一年三人は揃って首をかしげる。
まな板の上に置かれているものは紛れもなくジャガイモ、彼らの目にはそう映っている。
しかもよく見ればあのジャガイモ、水気が一切ない。
つまりすすがれていない泥だらけのジャガイモだった。


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作者名:にる | 作成日時:2021年4月1日 14時

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