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第五幕 ページ6

「こちらでお待ちください」


そう言われ女官に通された客室は、赤を基調に煌帝国独特の装飾が施された、中々に豪華な部屋だった。
室内にはテーブルやソファーは勿論、ベッドまである。室内にはあらかたの調度品が揃っていて、どうやら泊まる事も想定された部屋らしい。

……はたして皇族はとりあってくれるかしら。

私は女官が出て行った扉を見つめながら、ぼんやりと待つ。



十分程経った頃だろうか。



「風花舞踏団の女が来てるってお前のこと〜?」


ノックも無しにいきなり扉が開き、誰かが入って来た。


「はい、私がそうです」

「あ、やっぱりぃ……って、え?」


紅い髪をした、彼?彼女?……おそらく彼に視線を合わせる。
身なりからしておそらく皇族だろうその人は、何故だか妙なものを見たように、目を丸くして私の顔を見たが、気を取り直して口を開いた。


「僕は第三皇子の練 紅覇だよ。皇族に用があるんだって?」


良かった、彼で正解だった。


「はい。御目にかかる事が出来て光栄です、紅覇様。私は風花女流舞踏歌劇団の“夜桜”と申します。この度は我ら一座の入国並びに公演を御許し願いたく、やって参りました。
今現在、貴国が旅人の入国を規制していることは当然承知の上でございます。ですが私共は入国規制が行われる以前に、近々貴国で行われる式典の後の祝いの席で踊りを披露して欲しいとの依頼を頂いており、依頼を取り消すとの知らせは届いておりません。
しかし、私共のことは当日の楽しみということで殆どの方がご存知でないとのことでしたので、入国の検問所で依頼のことを申し上げても信じていただけないと判断し、どうにか入国の許可をいただく為に、こうして一人やってまいりました」


告げるべきことを全て告げ、“大姉様”宛に届いた煌帝国からの正式な出演依頼書を手渡すと、紅覇皇子は納得したとも不審に思っているとも受け取れる顔をした。
舞踏団に届いた依頼書は、正式な文章らしく高級な紙に墨で文字がかかれ、煌を治める皇帝たる練家の家紋が押してあるものだけれど、もしや手の込んだ偽装だったのだろうか?それか、入国規制があるはずなのに私がここにいることを訝しんでいるのなら、どうかそのことは聞かないで欲しい。面倒だし時間がなかったので、検問所の兵の隙をついて不法侵入した、なんて話をするのは御免だ。

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春波(プロフ) - 有紗さん» コメントありがとうございます!頑張ります! (2017年4月6日 12時) (レス) id: 1a8017367a (このIDを非表示/違反報告)
有紗 - めっちゃ続ききになります!更新がんばってください!! (2017年4月6日 0時) (レス) id: 29b6726ff9 (このIDを非表示/違反報告)
春波(プロフ) - アンジュさん» コメントありがとうございます。緑の黒髪とは髪の色が緑がかった黒だということではなく、艶やかな黒髪やみずみずしい黒髪という意味です。紛らわしい表現ですみませんでした。 (2014年12月25日 16時) (レス) id: 265852f7c9 (このIDを非表示/違反報告)
アンジュ - 緑の黒髪ではなく緑がかった黒髪の方が正しいのでは?緑がかった黒髪の方が読んでいる人もどんな色か想像しやすいかと。 (2014年12月25日 8時) (レス) id: 5ec94a4f4a (このIDを非表示/違反報告)
春波(プロフ) - リオンさん» コメントありがとうございます。すみません、名前変換はできるようにしていません… (2014年4月9日 17時) (レス) id: afd2fc571a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:春波 | 作成日時:2014年1月14日 22時

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