検索窓
今日:16 hit、昨日:15 hit、合計:11,713 hit

ページ8

考え事をしている間に寝落ちしたAの頭をそっと撫でた

眉間に深く刻まれた皺が心なしか緩んだ気がするのは俺の下心が見せる幻覚だろうか

どんな夢を見ているのか分からない
多分、いい夢ではないのだろう

もう一度髪を梳くように撫でたあと、そのまま手を滑らせて首筋に手を添えた

「………?」

右手は彼女の首に当てたまま左手は自分の首に当てる





「…………嘘、だろ」




自分の首を触って確信した
俺は脈が止まってる
死んでるんだからそれは当たり前だ

でも問題は、









「何で、」



Aの首筋からは、生きているという叫びが俺の指に伝わっていた






ーー



死という概念は実に単純で、俺としては身体の機能が停止したらそれに当たると思っている

それは結構スタンダードな考え方で、こうやって考える人は多いと思う


ただそれが正しい考え方かといえばそうだと断言することは出来ない

死ぬのはなにも身体だけじゃない
心だって、アイデンティティだって死ぬものだ

だからそう言った意味では確かにAも亡者なのかもしれない
だが身体的な意味に限っていえば、Aは亡者でもましてや死神でもない




うたた寝から目を覚ました彼女にそう伝えると、視線を彷徨わせた後にそっと俯いた

「……A」

「どうして、」

「え?」

「どうして、私が必死に否定してきたことに正面からぶつけようとするの」

「ーーお、れは」

「じゃあ私ってなに?死神でもない亡者でもないなのにこんなところにいる!!私はなに?教えてよ、私に教えてよ!!」


顔を上げた彼女の瞳からはとめどなく涙が溢れ、さっきの悪夢と繋がるところがあったのか眉間の皺はまた深くなっている

「今まで誤魔化して誤魔化して逃げてきたことに!自分の心につき続けてきた嘘に!向き合うなんて無理なのに、向き合ったところでどうにもならないのに、どうして私にトドメを刺すの!?」





女の子を泣かせた記憶さえも持っていない俺は、どうするのが正解かなんて分からない




だからせいぜい力いっぱい、彼女の身体を抱きしめた

まだあたたかい、その身体を。

☆→←☆



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (29 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
27人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ゆーき - エッ智春さん!?戻ってきてたんですか!?!?うわああああめっちゃ嬉しいです!(;_;)そして大好きな作者さんばかりなので毎回楽しく見させていただいてます◎これからも応援してます (2016年3月23日 18時) (レス) id: 675204a53d (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:Jin Say!! x他1人 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2016年3月19日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。