第三十二話 〜?side〜 ページ34
ガルワ様がお休みになられた。体調不良らしいが、そもそもの原因を、私は目の前で何度も見てきた。
学園中に広まった嘘の噂。心無い一言が書かれた手紙。ボロボロにされた内履き。彼女を見る人々の白い目。たまに聞こえる悪口。離れていく婚約者。その傍にいるのはガルワ様よりも愛嬌があるだけの令嬢。彼女がいくら強いメンタルと高いプライドの持ち主だからといって、それでも彼女はまだ16の子供じゃないか。こんな環境に居て、なにも傷つかないわけはないのに。
全部あの子が来てからだ。名前なんて覚えたくない。だけど嫌という程耳に入ってきてしまう。
エリザ・ロワ。私の恩人を追い詰める悪者。
この子と一緒にいると吐き気がこみあげた。わざとらしい上目遣い。あり得ないほどの鈍感。いっそ、自画自賛をする人の方がまともに見えるぐらいだ。
そして、そんな子が次期生徒会長らしい。馬鹿げている。まぁ、ヴィシア様には公に伝えていること以外に考えていることはあるのだろうけど。
「あ、××! 今日、A様のお見舞いに行くんだけど、一緒にどう?」
ガルワ様のことを名前呼び、か。いつの間にそこまで偉くなったんだか。それに私は、貴方に「呼び捨て、敬語なしでいいよ」なんて言った事ないのだが。
「ごめんなさい」と、苛立ちで引きつりそうになる笑顔を相手に見せる。エリザは気づかなかったみたいだ。少し悲しそうにしながら向こうに行った。
ああ、息がしづらい。彼女の周りはあまりいい空気はない。窓を少しだけ開ける。冷たい風が心地いい。気分が和らいでいく。呼吸がスムーズに行えるようになる。
「はぁ……気持ち悪い……」
男は馬鹿だ。あんなのに騙されるなんて。アレン様は第二皇子だからともかく、仮にエリザが婚約者としてお城に行った時、次期国王が誑かされないか心配だ。
空を見れば晴天だった。だけど、彼女がいないからか、私の気分はちっとも晴れない。ガルワ様は、いつもこんな気持ちなのだろうか、とふと考えてしまう。私には、あの人の思考など完全に理解することはできないというのに。
「でも、パーティのとき、笑顔が見れてほっとしたわ……最近、彼女はまったく笑っていなかったし」
『貴方、きれいなかみとひとみなのね』
『ところで、東洋の方なのかしら? 綺麗な髪と瞳ですわ』
貴方は、いつも私をそう言って見つけてくれる。
私はかつて、貴方を殺そうとしていたのに。
だから、私は貴方を守ります。××××家の××として。
20人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ふう(プロフ) - 読ませて頂きました!!もうほんと途中胸痛かったけど、最後ハピエンで良かったです!!何か、自分をみてくれないって思ってたところがえりざ?ちゃんと夢主ちゃん似てるな、って思いました!!素晴らしかったです! (2019年9月13日 17時) (レス) id: 98934c9ea5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:真冬 | 作成日時:2018年1月19日 23時