偽アイヌ 2 ページ6
「やっぱりどうも様子がおかしいぞ」
「まだ言うか尾形！！」
「尾形さんの言うとおり、私も様子がおかしいような気がします…。まるで誰かに脅されているような…」
「Aさんまで？！」
驚いたようにこちらを見つめる杉元さん。このままでは埒が明かないと思ったのか、視線を彷徨わせ、ある物を手に取った。
「これを使ってみせてくれ。ほんとのアイヌなら使い方を知ってるはずだ。…ちなみに俺はアシリパさんほどうまく使えなかった」
それは、先端が3つにわかれた棒のようなものだった。杉元さん曰く、アイヌでは一般的な道具らしい。
「まずは牛山！やってみろ」
「え？俺？何で俺が…」
半ば無理やり棒を押し付けられた牛山さんは、孫の手のように背中を掻いてみせるが、全然違うと一蹴された。
「じゃあ次！レタンノ エカシ、今のやりとりで何して欲しいかわかりますよね」
「早くやってくれよ爺さん」
尾形さんが急かすように促す。村長さんは、困った表情を浮かべながらも、椅子のように使った。
杉元さんにこの使い方が正しいかどうか反応を見ると、「そういう使い方もあるのか」と納得していた。絶対違うと思う。
「もういい俺によこせ。正しい使い方を当ててやる」
「尾形に分かるかなあ〜？」
挑発するように笑う杉元さん。そんな彼に、尾形さんはニヤリと笑って見せ、棒を村長さんへと叩きつけた。
「痛たあっ！！！」
先程までアイヌ語しか話せなさそうな雰囲気を出していた村長さんから日本語が飛び出したのでびっくりした。牛山さんも驚いたのか、「ジイさん、日本語話せたのか！？」と声を上げた。
「日本語を話せるアイヌなんて珍しくも何とも無いッ何てことをするんだ尾形ッ」
「ほんとにアイヌなら、痛いときとっさに日本語が出るもんかね」
「…聞いたことがあります。外国のスパイかどうかの見分け方は、驚いた時や痛かった時に出た言葉が重要だ、と」
私は以前読んだ本の内容を思い出しながら言った。すると、杉元さんはまだ村長さんを庇っているのか、アイヌのふりをして何の得があるんだ、といった。
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作者名：塩わさび | 作成日時：2022年8月11日 22時
