大雪山 ページ14
私達はそそくさと準備を整えると、いつ見つかるのかという緊張を持ちながら移動し始めた。
数時間ほどその調子で歩いていたが、双眼鏡を見ていた尾形さんがふいに声を上げる。
「見つかった！急げッ大雪山を越えて逃げるしかない！」
「マジかよ、この山を？」
距離があるとはいえ、相手は馬に乗っている。仕方なく、私達は大雪山へと足を向けた。
その途端、急に天候がくずれ、風が強くなってきた。杉元さんが雪を掘るか、と提案するがほれるほど雪が残っていない。
すると、白石さんが突然ぶつぶつとつぶやき、服を脱ぎ始めた。低体温症で意識がおかしくなってきたようだ。このままでは全員死ぬ。
そう思ったとき、視界の隅に大きな鹿がいるのが見えた。
「ユクだッ！杉元、オスを撃てッ大きいのが四頭必要だ！」
アシリパさんの声で杉元さんが銃を構えたが、それよりも早く尾形さんが2発撃ち、三頭が撃ち抜かれた。しかし、銃声に驚いたのか、他の鹿たちは逃げてしまう。
「急いで皮を剥がせッ！大雑把でいい！」
アシリパさんと杉元さん、尾形さんが皮を剥いでいく。私はというと、白石さんが逃げ出さないように服を掴みながら、彼を押さえ込む。この際、全裸がどうのこうの言っていられない。
皮を剥いだのを確認すると、一頭の中に白石さんを押し込んだ。残り二頭だが、もう一頭にはアシリパさんと杉元さんが入ろうとしている。残りは一頭しかいないが、恐らく尾形さんが入るのだろう。ならば仕方ないが白石さんと一緒の鹿に入るしか無いと覚悟を決めた時だった。
「もたもたするな。こっちだ」
と、私の手を掴んで引き寄せたのはなんと、尾形さんであった。
そのまま尾形さんの体に抱き着くような形で鹿の中に入る。狭いため、お互いの顔が近い。尾形さんに密着してしまっている。
「な、なんで、こっち向きなんですか…」
恥ずかしくて思わず小言を言うと、尾形さんは「急だったから仕方ねぇだろ」と返した。
確かにそうなのだが……。
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作者名：塩わさび | 作成日時：2022年8月11日 22時
