旭川第七師団潜入作戦 3 ページ12
「銃剣よこせ、俺がやる」
「自顕流を使うぞ、2発撃たれた状態で勝てる相手じゃない」
杉元さんが尾形さんに軍刀を渡すように手を出す。確かに、銃が使えない今、軍刀を持っている鯉登少尉と戦うには銃剣を使うしかない。
「尾形百之助、貴様…」
二人の会話を聞いていた鯉登少尉は尾形さんの存在に気がつくと、突然大声で怒鳴り始めた。早口で何を喋っているのかわからない。
「相変わらず何を言っているかサッパリ分からんですな、鯉登少尉殿。興奮すると早口の薩摩弁になりモスから」
挑発するように尾形さんは言った。
尾形さんの煽りに対して、鯉登少尉は怒りで体を震わせ、杉元さんへと刀を振り下ろした。鯉登少尉の構えには、見覚えがある。あれは薩摩の自顕流だ。
「杉元さんッ受けないで、流して！」
私は咄嵯に大声を出した。
しかし、杉元さんは避けることなく、真っ正面から受け止めるが、そのまま銃剣越しに勢いよく頭に叩きつけられる。薩摩の自顕流は、相手の頭を叩き割るような剣術だ。初手は受けるな、と昔聞いたことがある。
鯉登少尉は杉元さんへ打ち込んでいると、ふいに一本の矢が鯉登少尉の顔の近くに刺さった。下を見ると、どうやらアシリパさんが馬の上から撃ってくれたようだ。
「アバヨ鯉登ちゃん！」
鯉登少尉が矢にひるんでいると、白石さんが高く飛びあがり、頭上から鯉登少尉を蹴り落とした。そのまま勢い良く鯉登少尉と共に落ちていく。
「白石さんッ！」
私は思わず叫んだ。まさか、このまま落下して死んでしまうのではないかと思ったからだ。
だが、その心配は無用だったようで、白石さんは自分の体に縄を括り付けていた。白石さんの体は、そのまま木に突っ込んでいったが、次に現れたときはアシリパさんが白石さんの足を持って乗っかっていた。
格好が変だが、凛々しい面持ちで立っているアシリパさんをみて、何だか安堵してしまった。
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作者名：塩わさび | 作成日時：2022年8月11日 22時
