思い出の写真 ページ41
それから一晩あけ、私達は北見を目指した。どうやら土方さんの知り合いの写家師さんがいるようで、アシリパさんの写真を撮っておばあちゃんのところへ送れば安心させられる、ということだそうだ。
そして現在、北見の写真館へと来ていた。アシリパさんの写真だけではなく、せっかくなのでみんなで思い出のために写真を撮ろう、と提案される。
みんなが写真を撮っている様子を眺めていると、アシリパさんが「Aは撮らないのか?」と声をかけてきた。
「えっと……」
言葉に詰まってしまう。私は顔に傷がついてしまったし、写真写りもよくないだろう。何より、自分のこの姿を写真として残したくない。
「私は大丈夫です」
「どうしてだ?」
「だって、この顔じゃ……」
そう言うと、アシリパさんは私の頬に手を当てる。そして、そのまま顔を近づけてきた。
「私はAの顔好きだぞ」
そう言って笑う彼女に、不覚にもドキッとする。
い、いけない…。アシリパさんが男の子だったら確実に惚れていた。
すると、いつの間にか背後にいた尾形さんが口を開いた。
「おい、いつまでやってんだ」
尾形さんの言葉にハッとし、慌てて離れる。すると、アシリパさんは「なんだぁ〜?尾形ぁ、ヤキモチかぁ〜?」と言ってニヤニヤと笑った。心なしか、杉元さんたちから生暖かい目で見られているような気がする。
アシリパさんの言葉に、尾形さんは肯定も否定もしなかった。くだらないと呆れているのだろう。
それ見て、「ほぉ、貴方達はそういう関係ですか」と写真師の田本さんは笑う。
「いや、違うんです!」
「照れることはないですよ。せっかくなら一緒に撮りましょうか」
「で、でも…」
尾形さんのほうをちらりと見ると、ちょうどあちらも私を見ていたのか、目が合った。
「…俺はいい」
「そう言うな、尾形。いずれお前にもいい思い出になるだろう」
見計らった土方さんが、尾形さんへそう促す。
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作者名:塩わさび | 作成日時:2022年8月11日 22時