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盲目の盗賊 2 ページ36

私達は次の日、お世話になった息子さんにお礼を言うと、さらに北へと移動し、屈斜路湖についた。この日も、アシパさんのお婆ちゃんの十三番目の妹の息子さんにお世話になっていた。彼が言うには、囚人たちは新月に襲ってくるという。

先に昼間に相手の寝床に奇襲をかけたほうがいいと、杉元さんや尾形さんの意見から、次の日は近くにある温泉旅館に行くことになった。

温泉かぁ。久しぶりだな、と考えながら旅館の廊下を歩く。
内心、わくわくしているからなのか、足取りが軽い。足の捻挫も、アシパさんのおかげでもうすぐちゃんと歩けるようになりそうだった。もしかしたら、温泉に入れば治りが早くなるかもしれない。

アシリパさんとインカラマッさんは、お風呂に入る習慣がないからなのか、断られてしまった。仕方なく一人寂しく湯船に浸かる。

「はー……気持ちいぃ……」

思わず声が出てしまうくらい、最高に気分が良い。足を伸ばせるって素晴らしいことだ。
しばらく浸かっていると、向こうの男湯に誰かが入ってきた音がする。どうやら男性陣たちが入ってきたようだ。時折、谷垣さんが「チカパシ、走ると危ないからやめなさい」と注意する声が聞こえる。

「A〜!もういる〜?」

チカパシくんが呼ぶので、「うん!いるよ!」と返事をする。すると、男湯と女湯を隔てていた壁の向こう側から、何やら男湯のほうが騒がしくなった。

「俺もそっちに行きたいなぁ。Aと一緒に入ってトカプ見たかった〜!」
「チカパシ!!」

チカパシくんの言葉の意味を理解できなかったが、大方想像はつく。子供が言うことだから、特に気にはしないが、他の男性陣がどんな反応をしているのかは少しだけ気になってきた。

ふぅ、と一息ついて、また肩までつかる。しばらくして、杉元さんが話題を変えたらしく、盗賊の話になった。
私は、みんなが話していることを聞きながらも、頭の中で別のことを考えていた。それはつい先日のこと。尾形さんは一体どういうつもりで「家族になってやる」と、私に言ったのだろうか。

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作者名:塩わさび | 作成日時:2022年8月11日 22時

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