21story ページ22
ザッザッ＿＿＿
もう、どこを通ったかすらわからないほど進んだころ、狐は止まった。
そこには…＿＿
小さな村はあった。
本当に小さな、誰にも見つからないような。
テントみたいな家もあるし、小屋みたいな家もある。
広場もあるし、公園のようなものもあった。
そしてその広場の。
丸太の椅子の後ろに、ゆきが隠れながら顔を出していた。
耳と尻尾を出している。
少し怖いのか、怯えているように見える。
「あの、、。春斗君…。」
「ゆき。」
「っ！！」
春斗に名前を呼ばれて、ゆきはびくっとした。
恐そうに、身を縮めて。
そんなゆきを安心させるかのように、春斗は言った。
「大丈夫だよ。俺は何もしない。
こっちに来てよ。」
優しい声だった。
その声を聴いて、ゆきはようやく出てきた。
否。
ゆき以外の、他の狐たちも出てきた。
数匹、数十匹。
ぞろぞろと、群れを作って。
その中でも、一番偉いそうな、親分のような、頭領のような狐が春斗の前に出てきた。
ボフッ
「え？」
狐のはず。
春斗の目の前には、たしかに狐がいた。
なのに今は。
人間が立っていた。
おじいちゃんのような。
髭が生えていて、手には杖を握っている。
いかにも、長老です、みたいな雰囲気を持っている。
「このたびは、ゆきがお世話になりました。」
少ししわがれていて、でも責任感の強そうな声だった。
きっと、この狐の中で、一番偉いのだろう。
「えっと。こちらこそ…」
何を言ったらいいのかわからないので、礼をする。
「今回は、どういったご用件で？」
今すぐにでも立ち去れ。
そんなことを言いたげだった。
だが春斗は引かない。
引けない。
ここへ何しにきたかを、ちゃんとわかっていたから。
「少し、ゆきさんとお話がしたくて。」
そういった春斗に、狐の長老は、厳しい言葉を放った。
「おぉ。ならどうぞどうぞ。
ただし。
今後一切、ゆきと、いえ、
狐と関わらないでください。」
「・‥‥‥‥‥‥‥え？」
春斗の思考は一瞬止まった。
耳に入った言葉が、あまりにも重すぎて。
ゆきを狐だと知ったときより、もっともっと、強い衝撃が、春斗を襲う。
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作者名：キャンディット | 作成日時：2018年3月4日 14時
