【銀魂】先生と呼ばせてください (ページ1)

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先生と万事屋1 ページ1

僕はその人のことを常に先生と呼んでいた。

だからここにも、今はただ先生と書くだけで本名はしばらく打ち明けない。というか先生の本当の名前を、僕は長いこと知らなかった。

僕が先生と出会ったのは、桂さんと知り合った少しあとだった。万事屋で相変わらず自堕落な生活を送る銀さんにああだこうだ文句を垂れていたら、その人がやってきたのだ。

玄関で先生を見た時の不思議な気持ちを僕は忘れられない。中性的な顔立ちの人で、お時間ありますか、と声を出すまでその人が女であることが分からなかったほどだ。

伸ばした亜麻色の髪が綺麗な、落ち着いた色の着物を着た、上品そうな人だというのが、第一印象だった。

居間に通し、長椅子に座ってもらって向かい合った。

｢ええと、依頼ですか？｣

その人は静かに首を横に振った。

｢じゃあ何アルか、冷やかしだったら許さないアル｣

｢私をここで働かせて頂きたくて｣

｢｢はぁ！？｣｣

神楽ちゃんと僕の声が被った。

｢働くって……うち、給料も仕事もないですよ｣

｢構いません｣

ますます意味が分からなかった。

｢誰だテメェ｣

それまで黙り込んでいた銀さんがいつになく低い声で問いかけた。それは僕の考えた意味とは全く違う質問だった。

けれど何も知らなかった僕はその質問を、どこの誰とも知れぬ人を入れるわけにはいかないからとりあえず名を名乗れという意味だと受け取り、重ねて問うた。

｢名前と、住んでるところくらい教えてもらわないと……｣

｢名前……は特にありません。お好きなように呼んでください｣

｢じゃあピ〇子。私はそう呼んでやるアル｣

｢それはやめろォォォ！名前がないって、そんなことあるわけないでしょうが！｣

そんな不審者を万事屋に入れる訳には、ますますいかなかった。

｢テメェの名前があろうがなかろうがどうでもいいんだよんなことは。何者だって聞いてんだ｣

｢ちょっと銀さん、怖いですよ。それにどうでもよくないし｣

｢……また出直します。そのときには、名乗れるような名を考えてきますよ｣

｢え、ちょっと！｣

僕の制止も聞かずにその人は出ていってしまった。