その日、兼続殿は「義」を失いました。

過ぎ去る ページ19

時は、残酷に進むもので、関ヶ原から早、12年が経とうとしていた。兼続は、江戸城から米沢へと返されていた。
兼続は、一向に表情や声を前より発さなくなり、景勝はおおいに悲しんだ。

しかし、そんな兼続に転機が訪れた。

「よお、兼続。久しぶりだねい。」

「けっ…慶次！？」

長谷堂以来、姿を消していた慶次が帰ってきたのだった。慶次は兼続の親友であり、心の支えでもあった。そんな人が帰って来て、兼続は少し笑みを浮かべて、慶次を歓迎した。

「それに…しても。何故急に？」

兼続は、慶次に尋ねた。
すると慶次が、真剣な顔で答えた。

「風の噂で聞いてねぃ。直江兼続、能面な顔になり、義を捨てたと…。俺はそれが信じられなくて。」

「慶次…」

兼続は慶次に抱きついた。
泣きながら、すすり、嬉しそうに。

ーー

それから、慶次と兼続はずっと一緒に過ごしていた。
しかし、そんな幸せはすぐに終わった。

「かね…つ…」

「慶次っ！！駄目だっ！！死ぬなぁぁああ！！」

慶次は、兼続に看取られながら逝った。
兼続は前より一層、その時より悲しくなった
…

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