その日、兼続殿は「義」を失いました。

悲痛 ページ14

兼続は、あれ以来笑わなくもなったし、話もしなくった。話すときと言えば仕事の報告ぐらいであり、兼続はもう心を失い、義も失った。

そのことが信之の耳に止まり、信之は幸村に文を出した。





〜九度山〜

幸村「兼続…殿が…もう、笑わなくなった？」

幸村は信之からの文を、手からひらりと落とした。幸村にとって、兼続の笑顔は太陽であり、自分の生きる道標を照らしてくれる…そんな笑顔が失われたのだ。
そして、その後の文の内容が、幸村に一番の衝撃を与えた。

幸村「兼続…殿…が…、義を、失った……？」

幸村にとって、兼続の義は自分の生きる道標であり、兼続にとっても、生きる道標の義を兼続が失ったというのだ。
幸村は、文をまたもう一度読み返した。


幸村「兼続殿…貴方はやはり…」

幸村の顔が悲痛な顔となった。幸村は兼続の様子が無性に気になった。

ー自分の目で確かめたい…ー

幸村の脳内の中で、幸村はそう考えていた。





一方信之は、兼続の部屋に行った。
信之は「失礼します。」と言い、障子を開けた。

信之「なっ…」

そこには、やはり見るにも耐えない兼続の姿があった。

兼続「……」

兼続の無言の威圧感が、今はただ悲痛に感じたのだった。

ー幸村…兼続殿をこんな風にして、済まない…ー

信之は、静かに目を閉じた。

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