56輪目 ページ10
「黒子くんをどう思うか?」
練習中、黄瀬くんに尋ねられる。
「そうっス。あの人って、なんかその…。」言いにくそうに口ごもる彼。
その様子を見てなんとなく察した。
自分の方が実力が高いのに、なぜ彼が教育係でレギュラーなのだと不満に思っているのだろう。
「黄瀬くんは黒子くんを認められない?」
「うっ、その…そうっス。」
「たしかに、黄瀬くんの方が実力は高いよね。」
「ならどうしてっ。」
彼の言葉を遮って私は伝える。
「黒子くんの強さは、皆みたいに点を取る強さじゃないから。陰ながら皆を支える…そんな強さなの。」
「納得いかねっス。そんなの強さじゃなくないスか?」
じとりとこちらを見る彼。まるで駄々をこねる子供みたいだ。
「ふふ。一緒に試合に出たら分かるよ。」
「っ…。はぁ、もういいっス。…けど何で俺の聞きたいこと、分かったんスか?皆は気付かなかったのに。」
はぐらかされていると受け取ったのか彼は違う質問をした。
「だって黄瀬くん、分かりやすいから。私のことも不満に感じてるでしょう?なんで普通のマネージャーが自分のサポートなんだって。」
「えっ!?そ、そんなこと…。」
図星だというように動揺する彼。
「けど、私が皆と仲良くしてるからか少しは態度が柔らかくなったね。」
「うっ。」
私の言葉に、黄瀬くんはバツが悪そうにする。本当に分かりやすいなぁ。
「別に無理して態度を変えなくてもいいよ。」
「え?怒らないんスか?」
驚いたようにこちらを見る彼。
「怒らないよ。私が平凡なのは間違ってないから。けど、私はマネージャーとして選手である黄瀬くんを尊敬してるよ。」
これは本心だ。突出した才能もない私は見下されても仕方がないのだろう。
「あっ、そろそろドリンクを用意しなきゃ。練習、頑張ってね。」
そう言って、何か言いたそうな彼を置いて立ち去った。
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作者名:みぃ太郎 | 作成日時:2023年7月25日 21時