82輪目 ページ36
「すでに分かっていると思うが全中まで2週間を切った。ここからはより一層厳しい練習になる。全員心して取り組むように。よってここからの指揮は監督がとる。」
コーチの言葉に周囲がざわつく。
「えー…。」
「マジかよ…。」
そう零すのは青峰くんと紫原くん。
どこかどんよりとした様子の彼らに苦笑する。
「あの、どんな方なんですか?」
「そっか。黒子くんは初めてだもんね。」
監督のことを説明しようとすると後ろから声がかかる。
「そうだな。じゃあ挨拶しておかなければな。監督の白金耕造だ。よろしくな、黒子くん。」
振り向くと監督その人が佇んでいた。
「え、なぜ僕の名前を?」
「当然だ。選手の名前は全員覚えている。練習はいつも見ているからな。」
「「「チワス!!」」」
「ああ、固くならんでいい。いつもそう言っているだろう。」
監督に気づいた皆が挨拶をする。
「練習にはよく来ていたよ。」
「え?」
面食らった様子の黒子くんに赤司くんが声をかける。
「ただできるだけ選手の素の部分を見たいとかで2階などから何も言わずに見ている方が多い。ただ、公式戦が近づくとこうして自ら指導するようになる。」
彼の説明に納得した様子の黒子くん。
「なるほど。思ったより優しそうな方ですね。」
「それはない…。」
「あれ?」
優しそうな監督の印象と皆の反応の乖離に首を傾げる彼。
すると監督はそのまま前に出ると話し始めた。
「今までずいぶんのどかだったからな。ここからが本当の練習だ。はるかにハードになるが心配するな。若いうちは何をやっても死なん。」
微笑みながらそう話す監督。
ぽかんとした様子の黒子くんに声をかける。
「すっごく厳しいんだよね、監督。コーチの練習メニューが易しく思えるくらいに。」
「え…。」
去年は大変だったなぁ。倒れる人も続出して…。
どこか遠い目をしながらそう考えた。
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作者名:みぃ太郎 | 作成日時:2023年7月25日 21時