81輪目 ページ35
「そっか。やっぱり灰崎は辞めちまったか。…じゃあ、しょうがねぇな。」
ドリンクを口にしながらそう話す青峰くん。
「しょうがねぇって…少し冷たくないですか?」
「別になんとも思ってないわけじゃねーよ。けどお前やミケが行ってだめだったんだろ?ならしょうがねぇとしか言えねーよ。」
「え…?」
困惑した様子の黒子くんに声をかけようとすると、真ちゃんが口を開いた。
「灰崎はプライドが高い奴だ。俺達や先輩が行ったところで逆効果にしかならなかったはずなのだよ。辞めるか辞めないかは本人次第だ。」
真ちゃんの言葉は正論だ。
けど、黒子くんの言いたいことも分かる。私だってできるなら辞めてなんてほしくなかった。
「ですが…」
「ったく…いつまでも甘いこと言ってんな。ウチは仲よしクラブじゃねーんだぞ。」
反論しようとした黒子くんを遮って虹村さんが厳しい言葉を口にする。
「お互いが仲間であると同時にお互いが競争相手だ。いつから人の心配できるほど偉くなったんだ。振り返ってるヒマがあんなら走れ!」
そう言うなり、彼は練習再開だと指示する。
「私も…灰崎くんにはバスケを続けてほしかったよ。」
「亜麻野さん…。」
ぽつりと彼にそう話す。
「だから、灰崎くんが羨ましがるくらいバスケを楽しもう。そうしたら、きっと…」
「きっと?」
「ううん、なんでもないよ。」
不思議そうにこちらを見る黒子くんに笑ってごまかす。
『きっと』、その先は言えなかった。
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作者名:みぃ太郎 | 作成日時:2023年7月25日 21時