59輪目 ページ13
「訂正してください、今の言葉。」
気がつくと、私は彼女に向かって口を開いていた。
「はぁ?ていうか、誰よ、アンタ。」
「マネージャーの亜麻野ミケです。それより、訂正してください。必死にバスケに取り組む彼はダサいわけありません。」
彼女にはっきりと伝えるが、笑われてしまう。
「あはは。もしかして、アンタ、涼太くんのこと好きなの?」
「いえ、性格的にはむしろ嫌いです。」
そう答えると、後ろで吹き出す声が聞こえた。きっと青峰くんだ。
「どうしたんだよ、ミケちゃん?涼太のこと嫌いなら、庇う必要なくね?」
灰崎くんがニヤニヤと笑いながら話す。彼女も笑っていた。
「私はマネージャーとして、選手の彼を尊敬してる。だから訂正してください。」
2人をじっと見つめながらそう話す。
「なんなのアンタ。…もう行こう、灰崎くん。」
「そーだな。じゃあな、ミケちゃん、涼太くん。」
と2人はやっと去って行った。
全く、灰崎くんにもその彼女にも困ったものだと思っていると、
「な、何で俺のこと庇ったんスか?」という声がした。
振り向くと、黄瀬くんがひどく驚いた顔でこちらを見ている。
「言ったでしょう、選手としての黄瀬くんには尊敬してるって。必死に練習や…灰崎くんに食らいつく姿はダサいわけないから。」
「でも、俺、アンタのこと…。」
俯きながら話す彼に近寄る。
「私はマネージャーだから。選手を悪く言われて黙ってられなかったの。」
「お、俺…」
「けど、黄瀬くんにも非はあるからね。灰崎くんに絡むとロクなことがないんだから。…だから勝負するなら青峰くんとかに付き合ってもらうといいよ。」
私はぴしゃりと言い放つ。
「げっ、俺に振るなよ、ミケ!」
「さっき笑ってたでしょ。仕返しだよ。」
「あ、…」
「どうしたの?」
ぷるぷると震えながら俯いている彼に近寄ると、
「ミケっち〜!」「わっ!?」
という言葉とともに、抱き締められる。ち、力が強くて苦しい…。
「俺、感動したっス!あんまり良い態度を取ってなかった俺をマネージャーとして庇ってくれるなんて!それに、ちっこいのに祥吾くん相手に立ち向かってくれて…もうホントに感動したっスよ〜!!」
「く、苦しい…。」
何やら感動されているが、力いっぱい抱き締められて苦しい。
というか、自覚あったんかい。それに、ちっこいって失礼な…。
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作者名:みぃ太郎 | 作成日時:2023年7月25日 21時