26輪目 ページ28
「待たせたね、桃井。」
「ううん、大丈夫だよ。さあ、どうぞ。」
恐怖のカレーを振る舞うさつきちゃん。
「すまないんだが、オレは辛いものが苦手でね。せっかくだし、良ければ亜麻野と一緒に甘口のカレーも作ってみてくれないかな?」
「そ、そうしよう、さつきちゃん!」
赤司くんの言葉に全力で乗っかる。
「え?うん、分かったよ!」
さつきちゃんが笑顔で了承してくれるのを見て安堵した。
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そこからはもう大変だった。
何度も食材をそのまま入れようとしたり、プロテインやサプリメントを加えようとする彼女をなんとか止めてカレーを作った。作り終わった頃にはもうヘトヘトだった。
「はい、できたよ〜。」
可愛らしい声と共に出されたのは、まごうことなき普通のカレーだ。こちらを見る2人に、グーサインを出す。味見もしたし、ばっちりのはずだ。
「では、頂くよ。」
「頂きます。」
そう言ってカレーを口にする彼ら。緊張しながら見つめる。
「うん、美味しいよ。」
「あぁ。まさしく"カレー"なのだよ。」
微笑みながら話す彼らに胸を撫で下ろす。
「ほんと?良かったぁ。おかわりもたくさんあるからね。」
嬉しそうなさつきちゃんを見て、私達はゆっくりと息をついた。
「助かったのだよ、ミケ。」
「赤司くんのおかげだよ…。けど、たしかにさつきちゃんには炊事担当から外れてもらったほうがいいかも…。」
「ああ。オレの方から伝えておくよ。…あと、あの2人をどうするか。」
赤司くんの言葉に、ちらりと向こうを見ると、彼らは机に突っ伏したままだった。それを見て私は恐怖に震えた。
この後、なんとか目を覚ました2人は、さつきちゃんの料理についての記憶を失っていた。それを知り、さらなる恐怖を感じる。
『さつきちゃんに料理をさせてはいけない。』
これが私達の暗黙の了解になった。
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作者名:みぃ太郎 | 作成日時:2023年6月22日 13時