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「この際荷物は後回しでもいいです。用件を話してもらえます?」

「せっかちさんだねぇ。」

「ハッキリ言いますか?早い所帰りたいと言ってるんですよ。遠回しでは通じなかったようで残念です。」

「……ふふ、君のような勝気なお嬢さんは嫌いじゃないよ。」






嬉しくもない。Aが眉間に皺を寄せる様子に、森は笑みを浮かべて口を開いた。






「ポートマフィアに来て、組織に、私に貢献する気は無いかな。」

「お断りします。」





彼女はそう言って眼鏡を押し上げる。大体分かっていた要件ではあった。森こそ、その返事が来る事は予測出来ていた。然し、その表情は余裕の笑み。





「君の異能力は実に興味深いよ。物理を操る能力。その力が何処まで伸びるのかは予測が効かない。おまけに、うちのデータベースに侵入し、それに気付かれぬ程の能力があると聞いたよ。」

「そうですね。それが何か。」

「此方としても、君のような危険分子は排除してしまいたい。然し、ここで断るというのなら………この言葉の意味が分かるかね?」






森がそう尋ねても、彼女は特に表情を変えることはしなかった。「殺したければどうぞ。何方にせよ貴方側に着くことはありませんけど」彼女はため息混じりにそう言った。元より、森は彼女を殺す気が無い。彼女にデータを持ち出し、組織を崩壊させようとする意思が無いことを理解しているからだ。





「物応じしないその性格。尚更うちに欲しくなるねぇ。然し、断るというのなら仕方ないねぇ……」






一つため息を着いたあと、森はまたAへと目を向けて笑みを浮かべる。






「私と坂口くんが顔見知りなのは知ってるかい?」





坂口の名前が出た途端だった。彼女の纏う雰囲気ががらりと変わったのだ。森を睨みつけるその目は鋭く、次の瞬間には机上灯がぱりん、と音を立てて割れた。





「おや、恐ろしいねぇ。」





中原が彼女を取り抑えようとするのを、森は静かに制した。





「別に、坂口くんになにかしようだなんて思っていないさ。ただ名前を出しただけ、世間話でもと思ったのだけれど………君は存外情に厚く、家族想いなのだねぇ。血の繋がりは殆どない、義兄だと言うのに。」






森は割れた電球をぺっぺっと書類で床へと払い落とした。

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琉亜 - うち的にはもうちょい安吾との絡み見せて頂きたい (2023年2月23日 23時) (レス) @page7 id: 5309fc8273 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:花蛸花 | 作成日時:2022年4月29日 1時

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