捨てられた妹-7【文スト】

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新聞で姿の見えない女が新聞を読みながら呟く。鈴の音のような、軽やかで、それでいて心地のいい声だ。





｢倫敦で爆発事故多発……何処に行っても物騒なものは物騒だねぇ……そう思わないかい。迷える羊の王。ミスター……えー……しらうお、だっけ？｣





彼女は新聞を少しさげる。やっとその姿が見えた。長く絹のような金髪。 遮光眼鏡(サングラス)の奥の瞳の色が少し違ったが、彼女が誰かはすぐに分かった。





｢お前は……！｣

｢どうも、お久しぶりだねぇ、白魚くん。｣

｢……白瀬ですよ、お嬢さん。｣





白瀬はまるで、嫌味かのように胸に手を当ててお辞儀をした。その様子に｢昔より大分女性への態度が宜しくなったようで何よりです｣と笑いながら新聞を畳んだ。





｢俺の嫁さんだ。｣

｢へぇ、嫁さん……はぁ！？おま、お前……まさかそう言う……幼女趣味……？｣

｢違ぇわ！｣

｢幼女趣味はうちのお父様だけで十分さ。｣

｢お父様……？お前、父親居ないって言ってなかったか？｣

｢よく覚えておいでですね。色々あって、養子に貰われたんですよ。兄と苗字も違いますし。兄はもうポートマフィアにはいません。ここ数年で、色々様変わりしてしまいましたからね。｣





聞きたいことは山ほどあったが、白瀬は取り敢えず分かった様子で頷いて見せた。





｢それで、首領はどうした？｣

｢あん？居るじゃねぇか。そこに。｣





そう言って中原が指したのは、にこにこと笑う彼女だった。





｢……は？｣

｢改めて、ポートマフィア首領森Aと申します。｣





ポートマフィアの前首領は森鴎外。詰まり彼女はその後継。そこまでは理解した。そして彼女こそ、今最も恐れられている組織の、絶対的頂点に君臨する者だ。屈強な男か、それとも見るからにインテリな男なのか。そう思っていたのに目の前にいるのは如何にもお嬢様な風貌の女だった。

然し、やはり何度見ても身につけているものは高級なものだ。黒のベストに、黒の襟衣(シャツ)に白の首巻布(ネクタイ)、黒い外套、赤いストール。それを着こなす彼女は立ち上がると、白瀬に向けて手を差し出す。





｢まだまだ新米ではございますが、どうぞよしなに。｣





喫茶店に白瀬の声が響いた。

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