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「……あぁそうだよ。悪いかよ。」
その答えが意外だったのか、彼女はきょとんとしていた。中原はそんな彼女にお構い無しに、シャワーのあとで少し赤くなった頬を撫でた。
「お前が色の仕事をすんのは気に入らねぇし、それが当たり前になっちまってんのはもっと癪だ。でもそれは首領の命令でお前の仕事だ。俺がとやかく言うのはお門違い、寧ろそれをサポートしてやらなきゃなんねぇ。なのに、こっちが死ぬほど我慢してんの分かってんのかこのじゃじゃ馬が。お前は俺をどうしたいんだよ。責任取れんのか、あ?」
もはや若干キレ気味だった。余りに理不尽で、ぽかんとしていた彼女は思わず笑い出した。けたけたと笑う彼女を「何笑ってやがんだ」と睨みつける。
「なんの責任をとってほしーの?」
すり、と中原の手に頬を擦り寄せる。妖艶さを纏うその動きに喉が鳴る。五大幹部も所詮は男だ。彼女に備わる色気も、男の落とし方も、全部通用してしまう。それがなんだか悔しくて堪らない。凡てが彼女の掌の上にあるかのようで、悔しくて堪らない。策士な女だ。意地の悪い小悪魔のような女。女と呼ぶにはまだ幼くて、完熟しきっていないというのがまた腹が立つ。
此奴はやっぱり、あの忌々しい
「………俺の負けだ。」
「なんの勝負に負けたのよ。」
「先に愛してるって言った方の負けだ。今から俺はその勝負に負ける。」
「そんな勝負、私は受けた覚えもないんだけどね。良いでしょう、聞こうじゃないの。」
彼女と自分の手の大きさに大きな違いはない。中原の方が多少大きい程度だろう。それでいて、中原よりもずっと華奢で豆一つ無い手。武器を振り回しているとは到底思えないような、手入れの行き届いた手だ。その白く薄い手を握り、口を開いた。
「好きだ、誰よりも。お前だけを愛してる。」
情けない程震えた声だ。年齢も違いすぎる。身分も違う。それ故に言葉に出来なかったそれが、喉から絞り出された。その言葉に、彼女は嬉しそうに笑っていた。
「私も、中也さんが好きよ。誰よりも愛してる。」
その言葉がむず痒くて、自分よりもスっと出てきたその言葉がなんとも悔しくて、中原は複雑そうに、それでいて、嬉しそうに笑った。
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Napia - 完結おめでとうございます!! お疲れ様です!! 毎週のように「更新してるかな?」とウキウキしながらみてました!! 番外編も読みますぅ!! (2022年4月26日 16時) (レス) @page37 id: bc58708f8e (このIDを非表示/違反報告)
あんころ(プロフ) - お疲れ様でした!完結おめでとうございます!ダントツで面白かったです!! (2022年4月23日 19時) (レス) @page36 id: 9e178210e2 (このIDを非表示/違反報告)
クリスタルパワー(プロフ) - 完結おめでとうございます!!いつも更新を楽しみにしてました!番外編があったら楽しみにしてます! (2022年4月23日 19時) (レス) id: 47ef91694a (このIDを非表示/違反報告)
向月葵(プロフ) - 完結おめでとうございます〜!最初の頃からずっと応援していたので、見届けられてほんとに嬉しいですし、めちゃくちゃ面白かったです!番外編も楽しみにしてますね。 (2022年4月23日 19時) (レス) @page36 id: b81c3ee352 (このIDを非表示/違反報告)
Hazuki(プロフ) - 凄く面白いです!15ページの「鼻歌」が「花歌」になっています…間違っていればすいません。これからも更新楽しみにしています!! (2022年4月21日 20時) (レス) @page15 id: 140c609c2d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花蛸花 | 作成日時:2022年4月16日 11時