捨てられた妹-7【文スト】

・16 ページ16

香水を贈る意味。今まで贈呈品を贈る意味なんて気にしたことは無かったし、貰ったところで気にもしなかった。知りたいという事も特には無かったが、彼奴が知っていて自分が知らない。それが癪に触った。

中原はPCの電源を入れて香水を贈る意味を調べた。





｢………あーん？｣





香水を贈る意味は色々あったが、『独占欲の現れ』『あなたの好みを知っている』という意味があるらしい。彼女がもしこの意味を知っていたのだとするのなら、どういう感情でこれを渡してきたのだろうか。唯単に香水が減っているのを知っていたから渡した、というだけかもしれない。

中原は自分の手首へと鼻先を近づける。体温で香りが変わっていたが、それでも自分好みの香りである事に違いなかった。彼女は自分の好みを知っている。それがなんだか嬉しくて仕方なかった。彼女の選んだ香りに身を包んでいるのだと考えると余計に。成程、これが独占欲の現れなのだろうか。

なんだか恥ずかしくなってきて、顔が熱くなる。





｢何してんの？｣





突然聞こえてきた声にびくりと肩が震える。赤い顔のまま振り向けば、濡れた髪を拭く彼女が扉の前で首を傾げていた。





｢顔真っ赤よ？風邪でも引いた？｣

｢違ぇよ！それより髪拭け！お前が風邪引く！｣

｢じゃあなんでそんなに顔赤いの？あ、もしかしてやましいものでも見てた？｣





口元に手を当ててにやにやと笑う彼女に｢見てねぇよ！｣と叫ぶ。その間に、Aは中原のPCを覗き込んだ。





｢あ、おい……！｣

｢………ふーん？｣





彼女はまたにやにやと笑った。かと思うと、にっこりと笑みを浮かべて首を傾げる。





｢嬉しかったんだ。｣

｢な、にがだよ……｣

｢私が中也さんの好みを知ってることが。あ、それとも独占欲の方？私そこまで強い心算無いんだけど……何方かと言えば、中也さんの方が独占欲強いんじゃなくて？｣





くすくすと笑う彼女は、自分よりも年下のくせに余裕そうで、それが癪に触った。というか、男慣れしている所に腹が立つ。中原こそ経験が無いわけじゃない。身長は兎も角顔もいいので、色仕掛け(ハニートラップ)の任務が無かった訳でもない。身長が身長なので中々回っては来ないが。唯、六つも歳下の彼女の方がずっと経験値が高いというのも、中々にプライドが傷付くものだ。

・17→←・15

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す