・34 ページ34
新しい任務だった。マフィアも関わっているかもしれないという取引現場を押さえること。重大すぎる任務に、中島はバクバクと跳ねる胸を抑えながら、太宰と共に現場に向かった。
しかし、情報は見事ハズレ。変に緊張したな、と大きくため息をついた。
「さぁて、社に帰ろうか!」
「はい!……ん?太宰さん、これ……」
「んー?」
中島が指さしたのは、
「血痕だね。まだ乾いていないし、これは近いよ。敦くんはこの血痕を追ってくれたまえ。私はこの周囲にまだ人が残っていないか確認してくる。」
「分かりました!」
中島は太宰と別れて、その点々とした血痕の方へと向かった。マフィアの仕業か、それともまた別の事件なのか。内容によっては直ぐ軍警に連絡しなければならない。被害者が居るのなら尚更だ。
段々と見えてきたのは、黒い帽子をかぶった女性の姿だった。顔は見えていないが、その金髪には見覚えがあった。あの時は純白のワンピースに身を包んでいた彼女の姿が脳裏に浮かぶ。いや、まだ分からない。中島は壁にもたれ掛かるその女性にすぐさま駆け寄った。
「大丈夫ですか!……!!!」
顔をのぞき込むと、そこには確かに見覚えのある顔があった。目は開かれておらず、あの時見た深紅の瞳は見えていなかったが、確かに彼女だ。
「敦くん!」
「だ、太宰さん!この人……!」
「怪我人かい?にしても嫌な奴を彷彿させる格好だねぇ……とにかく、直ぐに社に戻って与謝野女医に……」
「違うんです!!この人、太宰さんの妹さんです!!」
「………は?」
その時、太宰は初めてそこに座り込む彼女の顔を目にした。血の気の引いた青白い顔。確かに彼女だった。空気がひゅっと音を立てて喉を通る。
「A……!!しっかりするんだ!A!!脈は……あぁ、まだある……早く、急いで社に戻るんだ……!敦くん!与謝野女医に連絡を!直ぐに治療を……!」
「は、はい!」
こんなにも焦っている太宰は初めて見た。冷や汗をかいて、力一杯に彼女を抱き締めていた。太宰は彼女を抱え上げると、突然にその場から走り出す。中島もその後に続いて、与謝野に電話をかけながら駆け出した。
太宰にとって、彼女はかけがえのないものだったのだろう。今のその一瞬で、それを理解した。
555人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あっきーばか(プロフ) - 初コメ失礼します。志賀くんタイプで性癖です。嫁にください。この作品の推し志賀くんになりました!読んでいてとても面白い作品をありがとうございます‼️更新頑張ってくだせぇ (2022年3月27日 10時) (レス) @page20 id: 43feeb5241 (このIDを非表示/違反報告)
Sena(プロフ) - 妹系大好きです!太宰さんとすれ違っている感じの夢主ちゃん、気持ちわかる…!!別小説なんですが、おっかな妹とかすっごく好きで!!現在は更新停止になっているようですが、また再開するのを楽しみにしています!!あと!反社とJKも大好きです!応援してます!!! (2022年2月10日 18時) (レス) id: 61121e16fc (このIDを非表示/違反報告)
にゃーちゃん - 初コメ失礼します!夢主ちゃんかっくいいぃぃぃぃぃぃい!もはやこの作品での推し夢主ちゃんかもしれない、、、←更新楽しみにしてます! (2022年2月10日 2時) (レス) @page46 id: eaf6e1fdb7 (このIDを非表示/違反報告)
おひな(プロフ) - 花蛸花さんが文スト作品を書いてくれるなんて思ってもいませんでした!しかも太宰さん!嬉しいです!!😭✨更新頑張ってください!!! (2022年2月2日 11時) (レス) id: fb3fd917e6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:花蛸花 | 作成日時:2022年2月2日 2時