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「なぁに中也さん。稽古を中断させてまでなにか御用?」

「あぁ、ちょっとな。三島はとっとと医務室行ってこい。」

「しかし、……!」

「幹部命令だ。とっとと失せろ。」





しっしっと手で払う中原に、三島はぎりっと歯をかみ締めながら、覚束無い足取りでその場を後にした。Aはと言うと、なんともないような様子でコンテナに座りながら髪の毛先を弄っていた。





「もうちょっと部下を大事にしてやれよ。」

「大事にどころか、私ってばすっごく優しいと思うけど?捨てられて、売られて、生きるあても生きる意味もなく、ただ息をしているだけの彼らに生きる意味を与えたのは紛れもない私じゃない。私を道標として歩み続ける。それが二人にとっては幸福であるんだよ。」





彼女はさも当たり前かのようにそう言い述べる。いつからこうなってしまったのだろうか。黒のために生まれ、黒のために生きる彼女。昔は、ただ書類整理をして、たまに太宰や自分の任務に同行して、いつも無邪気な笑顔を浮かべていた。

いや、あの頃から素質があったのかもしれない。人を殺したことは無かったにしろ、異能の問題も会って拷問者としてのスキルはもちろんあった。一番は、死体を見ても表情を変えず、それどころかいつも通り「兄様、私疲れた」と太宰の外套の裾を引く彼女を見た時は驚愕のあまり声が出なかった。太宰本人は特に気にした様子もなく、「そうか〜じゃあ兄様が抱っこしてあげる♡」なんて彼女を抱えあげると、死体を前にしているにも関わらず頬擦りをしていた。

彼女は元々才能があったのだろうか。いや、そもそも地下牢に幽閉されていた身なのだ。人の死なんて知らなかったような彼女が死体を見たところでなにか感情が湧くのだろうか。しかし、あれでも一応いい所のお嬢様だ。それなりの教養もあり言葉も丁寧で仕草も上品な彼女だった。

その名残なのか、太宰を兄様と呼んでいたし、不本意ながらも外では森のことをお父様と呼ぶ。本人たちはお兄ちゃん♡とかパパ♡なんて呼んで欲しかったらしいが、お兄様呼びはなかなか治らず、パパ呼びはそもそも本人から却下されていたが。しかしそれも、今となっては平気で人を殺し、地獄へと陥れる悪魔のような女に育っていく。





「で、御用件は?」

「あぁ。エリス嬢が呼んでる。」





自分では彼女は救えない。いや、救う必要も無い。これは彼女が選んだ道だ。今更光の世界に解き放ってやるなんて、それこそ彼女にとっては拷問だ。

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あっきーばか(プロフ) - 初コメ失礼します。志賀くんタイプで性癖です。嫁にください。この作品の推し志賀くんになりました!読んでいてとても面白い作品をありがとうございます‼️更新頑張ってくだせぇ (2022年3月27日 10時) (レス) @page20 id: 43feeb5241 (このIDを非表示/違反報告)
Sena(プロフ) - 妹系大好きです!太宰さんとすれ違っている感じの夢主ちゃん、気持ちわかる…!!別小説なんですが、おっかな妹とかすっごく好きで!!現在は更新停止になっているようですが、また再開するのを楽しみにしています!!あと!反社とJKも大好きです!応援してます!!! (2022年2月10日 18時) (レス) id: 61121e16fc (このIDを非表示/違反報告)
にゃーちゃん - 初コメ失礼します!夢主ちゃんかっくいいぃぃぃぃぃぃい!もはやこの作品での推し夢主ちゃんかもしれない、、、←更新楽しみにしてます! (2022年2月10日 2時) (レス) @page46 id: eaf6e1fdb7 (このIDを非表示/違反報告)
おひな(プロフ) - 花蛸花さんが文スト作品を書いてくれるなんて思ってもいませんでした!しかも太宰さん!嬉しいです!!😭✨更新頑張ってください!!! (2022年2月2日 11時) (レス) id: fb3fd917e6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:花蛸花 | 作成日時:2022年2月2日 2時

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