捨てられた妹【文スト】

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カタカタとパソコンのキーボードを叩く音が響くその部屋に何度も叩敲の音が響く。しかし部屋の主はパソコンに集中するあまりその音に全くと言っていいほど気づいていない。扉が開き、かつん、かつん、とヒールの音が響いた。





｢しーがくん。｣

｢ひっ！……って、Aさん……｣

｢何度も叩敲したのに返事しないんだもの。集中するのはいいけど、もっと他のところに目をやらないとね。この世界じゃ死ぬよ。｣

｢すみません……｣





眼鏡のブリッジを押し上げる彼＿＿志賀直哉＿＿彼女が拾ってきた部下である。拾ったと言うより買い取ったの方が正しい。闇オークションで売られていた彼の能力を見込み、彼女は誰よりも早く、それでいて高額な値段で彼を買取ったのだ。もちろん森の金で。

最初は異能を買ったつもりでいたが、まさかの機会にも強く頭もいいと来たもので、これはいい買い物をしたもんだ、と思う反面、体術が思った以上に飲み込みが悪く手を焼いている。術式を活かして欲しいのに上手くいかないものだ。





｢死体の解析は？｣

｢もうそろそろです、！｣

｢そ。悪いね、仕事がほかにもあるのに他の捕虜の死体まで調べてもらって。｣

｢いえ、そんな……！他でもないAさんからの頼みですので……｣

｢そう。じゃあ、少しここで待たせてもらうから、構わず続けてね。｣

｢は、はい……｣





志賀は内心｢逆にやりにくいなぁ……｣と感じていたが、集中してしまえば、彼女の存在なんてまるで無いかのように自分の世界に入り込んだ。相変わらず凄い集中力だと少し感心してしまう。

そこから数十分、志賀は｢終わりました、、！｣と椅子から立ち上がり、執務室のソファーで寛いでいたAの前に資料を差し出しながら頭を下げた。





｢ご、ご確認ください、、！｣

｢うん、御苦労様。助かったよ。なにか分かったことはあった？｣

｢は、はい……傘下に入っていた組織の名前とか本拠地とか……流石に詳しいデータなんかは分かりませんでしたけど……多分分かっても、尾崎幹部が他の捕虜から聞き出した情報がほとんどでしょうし……｣

｢十分だよ。協力者が分かればまた分かることも増えてくる。そうだ、明日なんだけどね、芥川くんに君と三島くんの訓練を頼もうと思ってるから。｣

｢は、はい……｣





訓練の話をすると、彼は分かりやすく落ち込んだ。顔に出すぎなところも何とかしないとなと、また新たな課題を発見した彼女は頭を悩ませた。

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