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家に着く頃にはだいぶ暖まってしまって、Aはこくんこくんと船を漕いでいた。首がかくん、と傾いては顔を上げて、たまにふりふりと首を左右に振る。かと思うと、またかくん、と首が傾く様子に、蘭は一生懸命笑いを堪えていた。
「もう家着くけど……もうちょい待てる?待てねぇなら寝ちまってもいいよ?」
「ん、いえ……大丈夫です……」
「ほんとにぃ?」
「はい………!」
ぐっと顔を上に向けて背筋を伸ばした彼女だったが、背中が丸くなりまた船を漕ぐようにこくりこくりと傾き始めた。可愛いなぁ〜〜なんて悶えていれば、やっとマンションが見えてくる。
「Aちゃん、もうちょいだから頑張って。」
「ん、はい………」
車を駐車場に止めてれば、彼女はカバンを持ってのそのそと車からおりる。眠たいせいでいつものように動けないのだろう。転ばないだろうかとハラハラしていたが、外の冷たい空気に触れて少しずつ目が冴えてきたようだ。
「う"ぅ〜……寒暖差で余計寒い……」
「家は暖房ついてるから、早く行こ。」
レオがいるから、とリビングの温度管理は万全だった。ボルゾイは基本的に暑さに弱く寒さに強い犬なのでさほど気にする必要は無いが、何せ人間も住む家なので致し方ないといえばそうだ。それに寒すぎるのも犬にとって良くない。ということになり、適切でちょうどいい温度にするために調節しまくったし、暑くなったら廊下に出られるように、と廊下に繋がる犬用ゲートまで作ってしまったのだ。サイズで言えば、レオは大型犬なので大の大人も四つん這いになれば簡単に通れてしまうくらいの大きさだ。
今のところそのゲートの使い道といえば、蘭たちが帰ってきた時のお出迎え用である。温度は気になっていないようだ。
蘭たちが玄関の扉を開ければ、レオは眠っているのかいつものように素早いお出迎えはない。これは蘭が夜遅くに帰ってくる日もそうだ。しかし、靴を脱いでいる間に物音に気づいたレオがリビングから廊下へと顔をだす。かぱり、とゲートを頭で押し上げると、二人の姿を確認してブンブンとしっぽを降っているが、まだ寝惚けた様子だ。ぽてぽてといつもより覚束無い足取りでこちらにやってくる。
「レオ、ただいま!」
「一人でお留守番出来て偉いなぁ〜」
二人揃って可愛い愛犬の頭を撫で回せば、ちぎれんばかりにしっぽを振っている。可愛いなぁ〜と、二人は顔を見合せた。
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Liezabeth Gillies(プロフ) - 中高生が書くような文章ではなくしっかりとした文才があり安心して作品を楽しめます。ところで、どのような結末になるのでしょうか。着地点はどこに、、? (2021年12月1日 1時) (レス) @page43 id: f20a915395 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ(プロフ) - 面白くて一気読みしました!好き!応援してます! (2021年11月10日 19時) (レス) @page22 id: 1f03340a86 (このIDを非表示/違反報告)
琉流 - すみません、20話の『頭のおかしい練習に囲まれて』は『頭のおかしい連中に囲まれて』の間違いではないですか? (2021年11月8日 3時) (レス) @page20 id: 45a1f0a151 (このIDを非表示/違反報告)
まるきち(プロフ) - 文章力ものすごいのに、ギャグ線強くて好きです♡前編からずっと読んでます!花蛸花さんのペースで頑張ってください💪 (2021年11月7日 12時) (レス) @page21 id: 4a45715550 (このIDを非表示/違反報告)
結菜 - 好き、、なんで、こんな、作品作れるの??え?なんでこんなに、文才あるの?え?神様って不公平だね。てか、神様っているのかな?、、、あ、挨拶が遅れてすみません!結菜です!花蛸花さんの作品好きです!面白すぎて一気見しました!!! (2021年11月4日 18時) (レス) @page18 id: 05b53aed2d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花蛸花 | 作成日時:2021年10月30日 2時