189、思い出せば ページ24
「……僕を恨んでくれて、かまわないから」
それはきっと、さっきの私の質問に対する肯定の意を示しているのだろう。血はつ
ながっていないらしいけれど、自分を育ててくれた人だから。そういう意味なのだ
ろう。
手をぐっと握りしめているジンさんは、下を向いていて表情がわからない。
「恨みませんよ、ジンさんのことは。……そんなこと、できるわけがないじゃない
ですか」
ジンさんは、私を助けてくれたから。幼い頃の私を、何度も何度も励ましてくれた
のだから。僕も両親が死んでしまったんだ、だからその気持ちはわかる。そう言っ
ていつも優しく。
「僕だって昔は、おじいさまの……海道義光の指示に従っていたんだ。同じだよ」
「ジンさん。私は、あなたに感謝しているんですから」
「え？」
「優しくしてくださったでしょう？ 忘れてないですよ」
でも。そう言って少しだけ逸れてしまった話をもとに戻そうとする。まだ肝心なこ
とが聞けていない。こればかりは、私の記憶の問題ではないのだ。
「私の両親はなぜ？」
「……研究のせいだと、聞いているが。死んだ人間を生き返らせる研究をしていた
そうだが」
「やっぱり。そうでしたか」
真理絵さんの話でも、同じようなことを言っていたし、きっと間違っていないのだ
ろう。そんなに恐ろしい研究なら、しなければよかったのに。そうしたら私はこん
な思いをすることにはならなかったのに。そう思ってしまった。
「ああ、もう。……ほんと、どうしてそんなこと……」
どうして私を残して逝ってしまったの。今になって、こんなにも苦しくなるなんて。
自分の両親のことと向き合おう、そう考え始めた頃は、こんなにつらくはなかった
のに。知れば知るほど、お母さんの優しさを、お父さんの手のぬくもりを思い出す
たび、息ができなくなるほど、苦しくなっていく。
「朝早く、すみませんでした。失礼しますね」
なるべくジンさんの顔を見ないように。私は今、きっと泣いているだろうから。そ
んな顔を、見られてしまわないように。
カラカラとドアを閉めて。どこに行けばいいのだろうと、考える。
私がいつも逃げている屋上には人がいる。教室にも、クラスメイトがいる。ほかの
教室にも、この学校の生徒たちがいる。どこに行けばいいのだろう。どこになら、
逃げられるのだろう。
ラッキーキャラ
法条ムラク
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 55人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「アニメ」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
陽竜☆ - ちょー久しぶり！覚えてる？更新頑張って(о´∀`о) (2015年3月16日 18時) (
レス) id: 6900af9726 (このIDを非表示/違反報告)
風陣歌唄(プロフ) - 七瀬 暁さん» ありがとうございます。最近ほとんど更新できていなかったのですが、それでも読んでいただけると嬉しいです (2015年1月31日 16時) (レス) id: e32c18931f (このIDを非表示/違反報告)
風陣歌唄(プロフ) - 美月さん» 久しぶり、返信遅くなってごめんね！中学校ってテストばっかりで大変だよね……。更新速度はどうなるかわからないけど、これからもよろしくね (2015年1月31日 16時) (レス) id: e32c18931f (このIDを非表示/違反報告)
七瀬 暁(プロフ) - 凄く面白いですね！更新頑張ってください！ (2015年1月10日 10時) (レス) id: a489451506 (このIDを非表示/違反報告)
美月 - 風陣歌唄さん» お久しぶり！期末テストとかで忙しくてあまり読めなかったけど・・・。続編おめでとう！これからもがんばってね（'＝'）あ、私は無事に中学生になれました！空手部に入ったよ（＞＜） (2014年12月23日 13時) (レス) id: 598d5a56fc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：風陣歌唄 | 作成日時：2014年8月3日 10時
