九 南蛮と足軽 ページ9
*
「……貴方、氏があったのか。
これは、とんだ失礼を。立花氏」
「あぁいや、今はそれが普通なんでそんな畏まらず。楽にしてくださると嬉しいです。
気軽にAって、呼んでください」
なるほど。
確かに昔は高貴な家柄しか苗字がないみたいな話聞いたことあるけど、その時の人だったのか。
「し、しかし……」
「特に私の所は、お隣さんも橘さんっていうんですよね。字は違うんですけど、橘メリッサさんという方が住んでまして。
もしかしたら会う機会もあるかもしれないですし……まぁ一応ってことで」
因みにこのメリッサが今回大助かりしているオーガニック女子さんだ。私も彼女から聞いた話なのでアレだが、名前の通りメリッサのお母様は外国の方で。どうやら日本の田んぼに強い憧れを抱かれたらしい。そこでわざわざ来日し、農業を営みつつ日本懐かしの暮らしをエンジョイしているのだとか。
「芽律紗……珍しい名前の響きだ。
これも今の日ノ本では普通だと……?」
にわかに信じ難そうなお顔。
でも不思議なことに、この時代の人だからだろうか。モロ外国名のメリッサが、日本人の名前に聞こえなくもなくなってくる。
「いえ、彼女は外国、うーん……そうそう、南蛮の血が入った方なので普通、ということはないかもしれません。確かに昔よりかは増えたとは思いますが、彼女は母親がここの方ではないからだと思います」
外国、という言葉は通じるのかと思ったが、彼が少し首を捻ったので慌てて言葉を探すと斜め後ろから聞こえた声。
一瞬落ち武者さんかと思ったが、その声は彼のものよりも余程若かった。流石に勝家さんの手前振り向くわけには行かず、悶々としていると。
スルッと私の前─勝家さんの後ろ─へ回り込んでくる亡霊の姿を見て、やっと合点がいく。その胸には大きな血の跡。
彼は通称足軽くん。
私は彼に会うまで死んだ武士さんは全部落ち武者なのかと思っていたら、どうやらそうではないらしく。落ち武者というのは敗者として逃れた武士のみを言うそうだ。
偶然落ち武者さんは本当に落ち武者だったものの、足軽くんにそれを言ったら酷く怒られた記憶がある。そこで、何と呼べばいいか聞いたところ自分が足軽だったことしか覚えていないのでそう呼んでくれ、と。
『駄目じゃんお嬢〜、ちゃんと日本語くらい喋らなきゃ。なんでここに柴田殿がいらっしゃるのか分かんないけどさ、あんま適当に絡んじゃだめだよ〜。
外国は南蛮! これ常識だからね〜!』
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さしみ(プロフ) - 初コメ失礼します!長らく更新させてないようですがとても面白かったです。いつか更新されるようならまた読みに来たいです。更新されるようなら無理せず頑張ってください。 (2020年12月4日 13時) (レス) id: 52bb9638d4 (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - 御津さん» お返事が遅くなりすみません!御津さん初めまして、ご感想とリクエスト、ありがとうございます。そろそろ1巻をキリよく終わらせるのに誰か居ないかなぁ…と迷っていたところでした是非瀬戸内にはトリを飾ってもらおうと思います!今後も完結までよろしくお願いします! (2020年2月3日 18時) (レス) id: 959b48d95f (このIDを非表示/違反報告)
御津(プロフ) - すっごく面白いです!よろしければいつか瀬戸内(毛利と長曾我)も宜しくお願いします。更新お待ちしてます (2019年11月15日 17時) (レス) id: 672fceb52b (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - 旅人さん» 旅人さん初めまして、温かいお言葉ありがとうございます!お市様は私が薙刀時代しか詳しく知らないのもあって薙刀にしました笑今後とも頑張りますのでよろしくお願いします!(また、他に誰か呼んだら面白げな方とかいればお気軽にお教え下さい!) (2019年7月17日 7時) (レス) id: 959b48d95f (このIDを非表示/違反報告)
旅人(プロフ) - コメ失礼します!主人公の周りが賑やかでとっても面白くて、あとその、お市様の薙刀時代(?)好きなのでめちゃんこ嬉しかったです…んんもう大好きです!これからも密かに応援させていただきます!無理のないよう、更新頑張ってください! (2019年7月16日 20時) (レス) id: e903332221 (このIDを非表示/違反報告)
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