異 時 代 交 流【戦バサ逆トリ】

四一　一触即発 ページ41

＊


「─……、──？」

「──!? そもそも、────」

「なんだと!? そらぁお前がインチキだとか言いやがるからだろ!!」


目の前の和室への襖。
もう開けなくても分かる。いる、確実に。
まぁもう声聞こえてきてるし。
和室の外にいる私にまで聞こえる程の言い争いって……よっぽどだ。その声のひとつはさほど大きくないが、もう片方は喋れば喋るほど大きくなっている。最後の方怒鳴ってんじゃないの？

三成さん方が帰ってから2ヶ月。
大学から帰る途中、家の方に雷が落ちるのが見えて、ああまた停電だな、なんて思いながら雨の中をタクシーで帰ったらこんなだ。

とりあえず開けるか。今もずっと喧嘩してるし。

「あのーすみませーん。
もう夜遅いので喧嘩はもう少し静かにやってもらえますかね？」

凄い近所のクレーマーみたいな言い方になってしまったが、しょうがない。うるさいもん。

襖にいた2人の男の人はピタリと黙った。
私の方をじいっと見つめて止まってしまった。驚かせたかなとも思ったが、今までの経験で考えるときっと武将さんみたいなソレだろうし大丈夫だろう。

「……貴様が、ここの家主か？」

あ、今ちょっとだけイラッときた。

「家主かも分からない相手に随分な物言いですね。この家には、私しか住んでませんし、今は家主という言い方は滅多にしません」

「この智将と云われる我より劣っているのだから、当然であろう」

「この雨の中放り出したっていいんですよ？ 私の名前だって知らないんだから警察に行っても無駄です」

まぁ彼らに警察が分かるとは到底思えないが。
生まれてこの方、腕のことで遠巻きにされたことはあるが『貴様』と呼ばれるほど荒くれた友人もいないしそんな過激な過去もない。三成さんや長政さんみたいに怒りっぽい人なら多少アレだけど彼からは怒りも困惑も感じない。よってこれが素だろう。そう毎日毎日、貴様と呼ばれては敵わない。何だろう、偉そうに。そんなに私と歳も変わらないだろうに。

「……平民の、駒の分際で我に楯突くつもりか？ 今すぐにその首を飛ばしてやってもよいのだぞ」

「あーーーちょっと待った待った!!
落ち着け毛利！ ここでこの嬢ちゃんの首を取ったら俺達この世でどう生きてくんだ！
嬢ちゃんも嬢ちゃんだ、見るからに丸腰で武装もしてないのによくコイツに食ってかかったな……とりあえず落ち着け。怪しいだろーが、俺らはそんなんじゃねえから。聞いてくれ」

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