夜空に描く星彩 ページ18
その日は夜空に星彩が描かれていた＿＿＿＿＿。
私の心にも＿＿＿＿＿＿＿。
「あ、上杉君。」
私の大好きな彼は、その日秀明の出たところで佇んでいた。天を仰ぐその姿は、どこか儚げで美しかった。
「立花、ちょっと時間ある？」
え、何だろ。今日は秀明がいつもより早く終わる日だったので、いつも通りの時間に帰れば大丈夫だと伝えた。
「じゃ、さ、ちょっと寄りたいところがあるんだけど。」
そう言って微笑む上杉君はどこか哀しく、冷ややかで綺麗だった。
「どこ行くの？」
「秘密。」
教えてくれる気配は全くなかったので、黙ってついて行くことにした。
この様子は、側から見ると恋人同士に見えるのだろうか。それともただの友達同士か。
夜の風に想いを馳せながら、愛しい人の背中を追って歩んで行く。
「あと少しだから。」
「ん。」
かなり歩いたと思ったけど、もう少しと言うので凛とした空気に身を任す。
夜は好きだった。朝も昼も夕方も、それぞれ全部好きだけど、夜には夜の良いところがあって、それが好きだった。
儚く、透き通っていて美しい。それが夜のイメージだが、実際その暗闇に立つと、優美なその魅力に呑み込まれそうになる。
「ここだから。」
その階段を見上げると、そこは小さな神社だった。赤い鳥居を潜る。ここに何の用があるのだろう。
しっかりと参拝してからも、上杉君は無言で進んで行く。少し戸惑いながらも、ついて行った。
神社の裏の林を通り、辺りには木しかない広場に出る。
「ここ。」
「え…ここ？」
「ああ、空見上げてみ。」
意外な場所に戸惑いながらも、ゆっくりと顔を上げた。
「わあ、綺麗＿＿＿＿！」
「だろ。」
見上げると、どこまでも続く星空が広がっていた。キラキラと輝く星。雲一つなく澄み渡っていた。
チラリ、と隣を盗み見ると、上杉君も空を仰いでいた。その目には星が映っていて、その他の感情を感じることはできなかった。
再び星へと視線を移す。
「綺麗だね。」
「ああ。」
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作者名：ぬの | 作成日時：2018年5月6日 11時
