ちゃんと見てよ。 ページ29
『…んぅ…?』
開けた瞳に映ったのは天井。…保健室…?
蘇るのはあの時体を襲った不快感。羽風先輩に腕を掴まれて、振り払おうとしてしまった瞬間に、体の感覚が全部消えた。
そこからの記憶がないということは、誰かがここに運んできてくれたのだろうか。あぁ。やらかしてしまった。私なんかが誰かに頼って迷惑をかけちゃいけないのに。
ふと横に目を向けると、椅子の上にメモがあった。そこには整った字で懇切丁寧に、物事が記されていた。
『羽風先輩…か…。』
あの人はなんでそんなに優しく出来るんだろうか。衣更真緒の妹だから…?いや、でも、UNDEADは強豪ユニットで…?考えれば考えるほどわからない。
きっとあの人は優しすぎるんだ。優しすぎるから誰にでも寄り添える。
”大好きだから”
そう告げてくれた彼の瞳は優しかったような気がする。でもごめんなさい。私にはわからない。まっすぐ向けられる好意にどう向き合っていいのか、友情的な意味でもわからないの。
とりあえず電話をかける。
するとすぐに出てくれた。すぐ向かってきてくれると告げてくれたその声に何処か安堵している自分がいる。
電話を切って、何となくスポドリを取りに行く。
久しぶりに開ける蓋は思ったよりも固くて、どうにかして開けてから、口に含んでびっくりした。
美味しくない。
飲み込もうとして無理だった。備え付けの水道に吐き出して咳込む。
『ゲホッ…な…で…なんで…ゲホッ…』
生理的な涙が滲む。普通に飲めていたはずのものが飲めない。混ざりあった味に体が拒否反応を起こす。
私の体はここまでにもボロボロなのか。
「…えっ?!Aちゃん大丈夫!?」
『は…かぜ…せんぱ…ゲホッ…大丈夫…』
こんな姿まで先輩に見られたくなかったのに。
「大丈夫じゃないよね、大丈夫だよ。落ち着いて…。とりあえず、よく分かんないんだけど…」
そう言って背中を撫でてくれる。
あったかい。落ち着く、
『っは…大丈夫です。落ち着きました…。ごめんなさい。ありがとうございます。』
「うんうん、大丈夫だよ。さっきはどうしたの?」
『あえっと…スポドリ飲もうとして、ちょっとむせちゃいました。』
「ホントに?」
『ですよ?』
ごめんなさい。先輩。優しい先輩に嘘をつくことを許してください。ごめんなさい。
「そう?ならいいんだけど…1個だけ聞かせてね。Aちゃんご飯ちゃんと食べてる?」
その問に体が固まった。先輩の瞳に捕えられて動けない。
『えっと…』
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夜空 -Night Sky-(プロフ) - すごく面白いです!!続き楽しみです!...完結? (2020年8月20日 0時) (レス) id: 2b2a41cc61 (このIDを非表示/違反報告)
緋凰(プロフ) - みかん星人さん» はっ…!確認してみたらそうでした…!ひぇっ…、やらかしです、、ご指摘ありがとうございます!更新頻度はバラバラですが、これからもよろしくお願いします! (2018年9月23日 23時) (レス) id: 2788ca1a51 (このIDを非表示/違反報告)
緋凰(プロフ) - 佳乃さん» 描写は自分の好きなように、綺麗に描写できるように、心がけているので嬉しいです!ありがとうございます! (2018年9月23日 23時) (レス) id: 2788ca1a51 (このIDを非表示/違反報告)
みかん星人(プロフ) - お兄ちゃん。のとこのホッケー、サリーの間違いじゃないですか?すいません!更新楽しみにしてます! (2018年9月23日 0時) (レス) id: 8089ca85b5 (このIDを非表示/違反報告)
佳乃(プロフ) - 真緒くんの両親が酷い・・・ただ描写が切実で切ない・・・思わず泣きそうになりました。 (2018年9月18日 22時) (レス) id: a3cd6ccc41 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:緋凰 | 作成日時:2018年7月20日 0時