＊*導かれし者へ*＊

言葉 ページ4

管理人は本を閉じて、静かに微笑んだ。

「最初の物語はどうだった?」

閉じた本を、管理人は本棚に戻した。

「この図書館は、全ての場所に存在する」

「導くべき者がいる限り、この図書館はどこへでも現れるよ」

貴方は図書館を見回した。

見渡す限り、本だらけ。

ページが多い本、少ない本、タイトルがない本。
黒い本、白い本、虹色の本、透明な本、ガラスの本。
薄汚れた本、美しい本、小さい本、大きい本。
様々な言語で書かれた本、記号や暗号のような本。

「ここにある本は、“全て”揃っています」

「地球から、宇宙から、異世界から。“全て”集められた」

管理人は本棚の本の前を歩きながら、貴方に問いかけた。

「貴方は他国の、世界の本を読みましたか?」

管理人はにこりと微笑み、やがて静かに呟いた。

“不幸な人は希望をもて。
幸福な人は用心せよ。”
――『ラテンのことわざ』

“最善のものを希望せよ。
しかし最悪のものに備えよ。”
――『西洋のことわざ』

“忍耐は運命を左右する。”
――『ラテンのことわざ』

“幸せは去ったあとに光を放つ。”
――『イギリスのことわざ』

“苦さの味を知らぬものは
甘さもわからない。”
――『ドイツのことわざ』

“山が高いからといって、戻ってはならない。
行けば越えられる。
仕事が多いからといって、ひるんではいけない。
行えば必ず終わるのだ。”
――『モンゴルのことわざ』

“転ぶのは恥ではない。
転んだままでいるのが恥なのだ。”
――『ドイツのことわざ』

“三月の風と
四月のにわか雨とが
五月の花をもたらす。”
――『西洋のことわざ』

“山は山を必要としない。
しかし、人は人を必要とする。”
――『スペインのことわざ』

“他人を幸福にするのは
香水をふりかけるようなものだ。
ふりかけるとき、
自分にも数滴はかかる。”
――『ユダヤのことわざ』

“自分が人を評価するように、
他人もまた自分を評価する。”
――『フランスのことわざ』

“人があやしてくれる時には笑いなさい。
でないと、やがて人はあやしてくれなくなりますよ。”
――『西洋のことわざ』

“喜びは分かち合うことによって倍になり、
悲しみは分かち合うことによって半分になる。”
――『スウェーデンのことわざ』

優しい声で、管理人は呟いた。

「言葉は不思議でしょう?」

「貴方にとって、他国の言葉は、どう感じましたか」

「さぁ、次の物語を貴方に」

そう言って管理人は、一冊の本を手に取った。

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