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春の予感 ページ1

ここは閻魔庁記録課にある資料室。

亡者を裁いている裁判所とは裏腹にここには平穏な時間が流れていた。

「平和だ…」

Aは来館者名簿を見ながらその事実を噛み締めるように呟く。

“葉鶏頭、鳥頭、蓬”

名簿には見慣れた名前が載っているだけ。

カウンターで管理書にハンコを押すだけの作業。

この日常が平和な証拠であり、同時に少しつまらなくもあるのだった。

「現世に視察に行きたい…」

Aは現世の刺激を求め、誰に伝わるとも無く独りごちる。

すると、何処かで聞いた事があるような声が頭上でした。

「君、現世行きたいの?」

驚いて勢いよく顔を上げ、3歩程後ろに下がってしまった。

非礼かも知れないが、急に話しかけられたら誰もがびっくりするだろう。

大目に見ていただきたいとAは思った。

「びっくりしすぎだよ〜」

白衣を着て頭巾を被ったその青年は、「あはは」と爽やかに笑う。

だが、その笑顔には何かしらの含みがある気がした。

(もしかしたらこの人はえぐいくらいのお偉いさんで面倒事を押し付けられるのかも知れない…)

Aはそんな事を考えながら、2歩前に出て用件を聞く。

「失礼しました。ご用件はなんでしょうか」

「用件っていうか、現世行きたいって聞こえたから僕も行きたいなぁ〜って思ってね?話しかけてみただけ」

そう言いながらも、ずっと笑顔が絶えない。

表情筋とか辛くならないのだろうか。

ちょっと失礼な事を考えながら、カウンターに手を着いて見下ろす青年の顔を見る。

パーツごとはシンプルだが、バランスが整った顔つき。

「アジア!」って感じの人だ。

(にしても何処かで見た事あるんだよなぁ…)

記憶を辿るが、どうにも出てこない。

(思い出せないの気持ち悪いな…)

「どうしたの?しかめっ面になってるよ」

青年は細い眉を上げて私の顔を覗き込む。

「あぁ、ほんとですか?すみません」

「せっかくかわいいのに」

「え?」




(私にも春の予感かもしれない…!)

そんな呑気なことを考えていたが、その淡い望みはよく知る人物によって崩されると言うことをこの時の私は知らなかった。

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設定タグ:鬼灯の冷徹 , ちょいコメディ , 鬼灯様メイン   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:ぽてと | 作成日時:2021年4月21日 6時

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