26話 ページ26
首領に手袋を頂いてから、1週間かけて精密検査を行い、松葉杖は手放せないものの無事退院が決定した。
入院中私の荷物は男の家で預かってくれているらしく、さっさと部屋を探してしまわねばと賃貸情報を漁っていたのだが・・・・・・。
ヨコハマはどこもかしこも物価が高く、私が住んでいた部屋と同等の部屋を見ていれば文字通り桁違いだった。ありえない。
とりあえず、荷物が置ければそれでいい。
寝泊まりはマフィアの本部でも出来そうだし、ビジネスホテルにもなんでも泊まりに行けば何とかなるだろう。
そして、今日から本格的な仕事が始まる。
男と私が2人して出撃しなくてはいけないような案件は特になく、部下への仕事の割り振りや、報告書に目を通すのが主な仕事だった。
もちろん私のではなく、男の。
「ねぇ、暇よ。仕事を頂戴。これじゃ給金泥棒だわ」
「今その足で何が出来んだよ」
「幹部様の肩でも揉んで差し上げようかしら」
「いらねぇ」
「あら他の場所がいいの?」
そう言って意味深にクスリと笑えば、幹部様は飲んでいた珈琲を盛大に吹き出して恨めしそうに私を睨んだ。
「変な意味じゃないわよ」と一応弁解するものの男の眉間に皺はよったままだった。
「さっきから貴方が睨めっこしてるその紙には何が書いてあるのかしら」
話を逸らそうと後ろに回り込み、男が手に持っていた紙を覗き込む。
特に咎められはしなかったので下級構成員である私が見ても問題のないものなのだろう。
「密輸品輸送車が襲撃、ねぇ」
つまりは商売品が盗られたのだ。
こんなダイレクトに商売を邪魔されたとあってはポートマフィアの面目丸潰れというものだ。
「しかもこんな往来でよくやるものだわ」
襲撃された場所は一般人が通ってもおかしくないような道路で、夜だったから目撃がなかったのだろう。
「幹部様はどういうお考えなのかしら?」
「その幹部様っていうのやめろ」
「でもこれ、一体何が盗られたのよ」
「武器と一緒に紛れてた骨董品だ。売ればそこそこの値がつくから一緒に買い取ったらしい」
わさわしと頭をかく幹部様はそうとうイライラしているようだったので、吹き出させてしまった珈琲のお代わりを入れてあげようと給仕室へと向かった。
769人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
柚子豆腐(プロフ) - 天草嶋さん» コメントありがとうございます!最終話までお付き合いいただき本当に嬉しいです。番外編は書くか分かりませんが中也の話はまた書きたいと思ってますので今作以上にかっこいい中也をお届けできればと思います!新作もどうかよろしくお願いします。 (2019年8月6日 3時) (レス) id: 39b3b859c1 (このIDを非表示/違反報告)
天草嶋(プロフ) - 最終話が拝めて本当に満足です。今まで私が見たどの夢小説の中でも一番理想の中也像が描かれていて本当に大好きな作品でした。終わってしまったのは少し寂しいですが、また何か番外編などあれば是非読みたいです。新作も楽しみにしています!お疲れ様でした! (2019年8月5日 19時) (レス) id: be6bb92be5 (このIDを非表示/違反報告)
柚子豆腐(プロフ) - 謝花さん» コメントありがとうございます!こちらこそまじ感謝です!これからも頑張ります! (2019年7月20日 0時) (レス) id: 39b3b859c1 (このIDを非表示/違反報告)
柚子豆腐(プロフ) - 桜咲月菜さん» コメントありがとうございます!読んで下さっている読者様の方こそが神様でございます…でも、嬉しいです…… (2019年7月20日 0時) (レス) id: 39b3b859c1 (このIDを非表示/違反報告)
謝花 - 尊…い…まじ感謝です (2019年7月19日 14時) (レス) id: cfb76e4621 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:柚子豆腐 | 作成日時:2019年5月14日 5時