27話 ページ27
お湯を注ぎながらふと思った。
私があの男に何かしてあげたのって、これが初めてじゃないだろうか。
思い返す限り、その日のご飯を用意してくれたのも後片付けも、朝の珈琲ですら、何から何まで男にやらせっぱなしだった。
だけどご飯とか、男が作るより上手く作れる自信なんて無いし。いや、でも後片付けぐらいすれば良かった・・・・。
本音を言うと、そんな私でも男はあまり気にしていなさそうだった。というか気にしてたらわざわざ週1ペースで来たりしないだろうし。
考えた所で仕方がない。次の機会があれば食器洗いぐらいしてやろう。仕方がないから。
「何者なんだよ、あの女」
「今日入ってきたばっかの女か」
「先輩に挨拶もしないで幹部の執務室に入り浸りやがって、下級構成員のくせに」
「中原幹部の愛人かなんかじゃねぇの」
給仕室の外で、男ふたりのが明らかに私の陰口を叩いていた。
ふむ、まぁそういう事もあるだろう。
というか私がその立場なら確実にヤキを入れている。
『中原幹部の愛人かなんかじゃねぇの』
愛人、ねぇ。
確かに恋人では無いけれど、流石に愛人は傷つくなぁ。
けれど、関係がハッキリしないと言うことはそういう事なのだろうか。
まぁ身長は低めだが、あの男より背の低い女子なんていくらでも居るだろうし、地位もある。
各地に現地妻ぐらいいてもおかしくないだろう。
そういうタイプには見えないけれど。
というか何人も女を作れるほど器用じゃない。
「おまたせ、お待ちかねの珈琲だよ」
「あ!貴女がお噂の藤島さんですね!」
「いかにも、私が藤島です。どちら様で?」
男の執務机の前で、背の低い、されど声は鈴のように高く、大きい瞳がハッキリと私を捉えた。
・・・・私そんなに噂になってるのか。
「中也さんの直属の部下をさせて頂いてます!来月から準幹部に昇進予定です!桃瀬と申します!」
明るい、眩しい、これが若い者のパッションと言うやつ・・・・・・。
彼女のあまりの眩しさに思わず目を細めてしまう。
幹部呼びではなく、名前にさん付けと言うことはさっきの男達よりも立場は上なのだろう。
ん、そう言えば準幹部に昇進とか言っていたな。
「ところで、藤島さんの階級は?」
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柚子豆腐(プロフ) - 天草嶋さん» コメントありがとうございます!最終話までお付き合いいただき本当に嬉しいです。番外編は書くか分かりませんが中也の話はまた書きたいと思ってますので今作以上にかっこいい中也をお届けできればと思います!新作もどうかよろしくお願いします。 (2019年8月6日 3時) (レス) id: 39b3b859c1 (このIDを非表示/違反報告)
天草嶋(プロフ) - 最終話が拝めて本当に満足です。今まで私が見たどの夢小説の中でも一番理想の中也像が描かれていて本当に大好きな作品でした。終わってしまったのは少し寂しいですが、また何か番外編などあれば是非読みたいです。新作も楽しみにしています!お疲れ様でした! (2019年8月5日 19時) (レス) id: be6bb92be5 (このIDを非表示/違反報告)
柚子豆腐(プロフ) - 謝花さん» コメントありがとうございます!こちらこそまじ感謝です!これからも頑張ります! (2019年7月20日 0時) (レス) id: 39b3b859c1 (このIDを非表示/違反報告)
柚子豆腐(プロフ) - 桜咲月菜さん» コメントありがとうございます!読んで下さっている読者様の方こそが神様でございます…でも、嬉しいです…… (2019年7月20日 0時) (レス) id: 39b3b859c1 (このIDを非表示/違反報告)
謝花 - 尊…い…まじ感謝です (2019年7月19日 14時) (レス) id: cfb76e4621 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柚子豆腐 | 作成日時:2019年5月14日 5時