◇ ページ13
「ここでいい?」
カカシ先輩が指をさしたのは個室居酒屋だった。
大丈夫です、という意図でゆっくりと頷いて二人で店の扉をくぐり店員に二人ですと伝えると運よく席が空いていたらしくすぐに案内された。
そう言えば、先輩と二人きりで食事なんて初めてだ。
案内された席に向かい合わせで座り、メニューに目を通している先輩の顔を見つめた。なんとも言えない緊張が張り巡らされた。
任務の時ですらこんなにも緊張しないのに、どうしてこの人のことになるとこんなにも胸が高鳴って心を乱されて、体が熱くなってしまうのか。今も、この状況が嬉しすぎて気をぬけばにやけてしまいそうだ。
「なんでも好きなのたのんで……何が好き?」
メニューから顔を上げ、私のほうをみた先輩と目があってしまい、はやくそらさないと、そう思うのにあんまりにも綺麗な瞳をしているものだから体が動かなくなってしまう。
そんな私を不審に思ったのが先輩は私から目をそらさないまま首を傾げた。
「なんでも好きです、先輩が食べたいものを頼んでください」
「んー……じゃあ食べられないものは?」
先輩はまたメニューに目線を落とし、交わっていた目線は外れてしまった。残念な気はするが、目が合うのはなんだか見られていると意識してしまうので苦手だ。
…………嫌いなもの?
嫌いな食べ物が思いつかないわけじゃない。思いつきすぎて、何から言えばいいのかわからないのだ。というか、好き嫌いの多い女だと思われたくない。
「なんでも食べられます」
「へぇ、好き嫌いないんだ。えらいえらい」
その褒め方は、完全に子供扱いだな。……嘘ついてるのに褒められてもなぁ。
「先輩はてんぷらがダメでしたよね」
「あれ、そんな話したことあった?」
ずきりと、小さく胸の奥が痛んだ。
「もうずいぶん前の話ですけどね、先輩本人から聞きましたよ」
よく覚えてるね、と先輩はメニューから目を離さない。
先輩からしたらきっとどうでもいいことだったのかもしれない。自分の苦手な食べ物を私に喋ったことなんてきっと些細なことで、私からしたらそれはとても大切なものだとしても。
「とりあえず飲むでしょ?」
「明日もあるので、少しだけなら」
店員を呼び、お酒と食べ物をいくつか注文し先輩はパタリとメニューを閉じた。
何か、喋らないとと考えれば考えるほど何も浮かばず沈黙を破ったのは結局先輩のほうだった。
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蒼葉(プロフ) - カカシ先生すっごいかっこいいです!!面白いです!!更新待ってます! (2019年3月29日 15時) (レス) id: 23fe071b17 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柚子豆腐 | 作成日時:2019年3月5日 2時