-72- ページ29
頂上戦争
もうすぐ1年が経つその戦争中、この女の正体が割れたのもなかなか大きなニュースだった。
そして火拳のエースと共に死んだという報道と、まだ生きているという報道が2つ並び、生死不明のまま今に至る黒フード、アイリン。
外にいても目立つと仕方なく一旦船の中に通した。
「赤犬の攻撃を受けて本当に生きているとはな」
『まァ、黄泉の国に片足突っ込んできたけどね』
「そうか…てめェ麦わら屋の姉だったか。別に礼なんていらねェ。助けたのは俺の気まぐれだ」
『いいえ。あなたにとっては気まぐれでも、私にとっては大切な弟を救ってくれたという事実は変わらない。直接お礼を言いたかったの。
本当にありがとう』
麦わら屋の姉、か。
こういう純粋な真っ直ぐな視線は嫌いでは無いが、反応に困る。少し視線を逸らすしか無かった。
『それにしても、気まぐれと言うには大それたことをしたものだね。戦争中の海軍本部にわざわざ乗り込むなんて正気じゃない。
でも、敵でありながら未来の海賊王の命を救ったんだ、その価値は十分すぎる』
「へェ、白ひげですら就けなかった王の座にてめェの弟が就くと？」
『あの子はなるよ。いつか必ずこの海の頂点に立つ。絶対だよ。
親父が座らなかったその空席はルフィのために空けてあるんじゃないかと思うわ』
少しは煽りに乗るかと思ったが肝の据わった女らしい。反発するどころか面白そうに笑っていた。
『で、私は勝手にあなたに恩を感じているからなにか私にできることならなんでも言って！力になれること、何かある？』
律儀なやつだ。
だがこいつ、何を勘違いしているのか俺は善人では無い。
海賊に、敵に、気を許しすぎじゃないのか。
そうだな、と呟きながらそいつに近づくが彼女は怯む様子もなく変わらず真っ直ぐな目で俺を見返す。
その目を少し揺らしてやりたくなった。
クイッと女の顎に指を添え、上にあげると少し見開かれた丸い瞳に自分の姿が映り込む。
そのまま少し顔を近づけ、身を引こうとする彼女の腕を押さえると尚その表情は強ばり気分が良くなった。
「俺が欲しいもの、何でもくれるってのか？」
『…ッ』
「なら、お前の心臓を俺に寄越せ」
俺は優しい人間なんかじゃねェからな。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 230人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
葵(プロフ) - ココナッツさん» とりかごも読んでいただいたんですね！嬉しい限りです！今後とも感動できるお話を届けていきたいと思っておりますのでこちらの続編も楽しみにしていただけると幸いです。応援のコメント本当に励みになります！ありがとうございます！！ (2023年2月7日 21時) (
レス) id: d6d31879de (このIDを非表示/違反報告)
ココナッツ(プロフ) - 葵さん» お返事ありがとうございますっ 止まらない涙で文字を読むのに時間がかかりましたが…何度でも読み返せます。 今日鳥籠の方も拝読しましたっどちらも良いですね…私の涙腺が大変なことになってます笑笑 更新大変かとは思いますが、楽しみにお待ちしております！ (2023年2月2日 23時) (レス) @page33 id: a1f85287cc (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - ココナッツさん» ココナッツ様コメントありがとうございます。大分長い作品なのに一気読みしていただいてありがとうございます！私も泣きながら書いていたので泣いていただけて嬉しいです！今後の展開も楽しみにしていただけたらなと思います！ (2023年2月2日 20時) (レス) id: d6d31879de (このIDを非表示/違反報告)
ココナッツ(プロフ) - ワンピース大好きで、作者さんの作品を見つけた瞬間3日間ほどで一気読みしてしまいました笑 後半は泣きながら読みました…辛いけど私も夢主さんが生きててくれて嬉しいです…！ これからの行く末がとても気になります。更新大変だとは思いますが、応援してます！ (2023年1月31日 13時) (レス) @page26 id: 160792ee1b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：葵 | 作成日時：2023年1月24日 15時
