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「は？え、待て！色々と待て！
手が動かね…っていや白ひげ！？なんでそんな大物がこんな政府も目に止めねェような島に！
どうなってんだ！」
「ドレイたちはすでに解放され我々の部隊もほぼ壊滅！！ここにヤツらが攻め込んでくるのも時間のもんだ」
どごおおおおおおん
ものすごい音と共に部屋の壁が崩れその奥からは遠目からでもわかるほどの大男が薙刀を片手にこちらに歩いてくるのが見えた。
白ひげ…？一体だれだろう…
考える間もなく首に男の腕を回され、口の中にナイフを突っ込まれた。
頬を裂かれたあの感覚を思い出し少し身震いしたが、そんなことに構っていられないほど私の体力はもう底をつきかけていた。
「そ、それ以上近づくんじゃねぇ！！この女の喉に穴が空くぜ」
あ、能力解けちゃった…やっぱり体力がないと上手くはいかない……
白ひげさんとやら、私のことはもういいよ。
他のみんなが無事ならもう私はお役御免…あとは楽にしてくれればそれでいいよ…
「グララララ、そんな死にかけの娘を盾にするたァ情けねェ男だな、てめェ」
「こ、この島に何の用だ！俺はてめェらみたいな海賊に手を出した覚えはねェぞ！！」
「確かに、手を出された覚えはねェなァ。だがてめェらみたいな連中見てると虫唾が走ってならねェ。
おい、小娘ェ。生きてるかァ。
もう少し、待ってなァ」
あまりに優しい声だった。
生きることを諦めた私にとって勿体ないほどの。
もう死んだって構わないのに。
あるかも分からない来世に期待しようって決めたのに。
希望なんてもうどこにもないと信じ込んでいたのに。
頭に思い浮かんだのは懐かしい弟たちの顔。
私の名前を呼ぶみんなの声。
まだ、死なせてくれないのね。みんな。
今更、遅すぎるくらいに今更
生きたい、と思った。
「ッうわぁぁあ！来るな！俺の邪魔をするなッ何！？」
動揺する男の足を透明の弱々しくも大きな手が逃がすまいと押さえつけていた。
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作者名：葵 | 作成日時：2023年1月12日 8時
