運命の炎の糸-3-【白ひげ海賊団】 (ページ13)

今日:2 hit、昨日:8 hit、合計:29,997 hit

=2= ページ13

毎日毎日、朝日を見るたび生きていることが不思議になる。

別に嬉しいわけじゃない。なんならもう目覚めなければいいと思ったことは一度や二度では無い。

能力で全てを吹き飛ばしてしまいたいがその日生きるので精一杯の底の尽きそうな体力ではそれも出来なかった。

私のこの能力は2人目の“飼い主”から逃げ出したとき手に入れたものだ。そいつは海賊で盗んだ財宝の山の中に隠れていたのを見つけ、空腹に耐えきれず盗んで食べた。

短い逃走期間の中で少しだけ扱い方を覚えたが能力者だとバレたらもっとひどい仕打ちをされるかもしれないと思い、ずっと能力者であることは隠してきた。

…まぁここの一つ前のこのキズを着けた“飼い主”のところからはどうしても逃げ出したくて能力を使ったからバレてしまうのも時間の問題かもしれないけど。

痩せこけた手足で重い荷物を永遠と運ばされる。

一体この生き地獄はいつまで続くのか。

とうとう限界を迎え、その場に膝を着いてしまう。目敏く見逃してくれるわけもない看守のような男がムチで私の体を叩くがもう抵抗する力すら残っていない。

私はそのまま引き摺られ、ボスと呼ばれる“飼い主”の所まで連れていかれた。

「はっはっは！若くて綺麗な娘がこんなところで死ぬなんざ嘆かわしいねェ！顔のキズがなきゃまた売り飛ばして金にしてやっても良かったが
….おい！オマエ俺のオモチャになるなら助けてやってもいいぜェ？

おい、聞いてんのかぁ？？」

鋭いナイフでぺちぺちと私の頬を叩く男。

……もう死ぬならこの男も道ずれに出来ないだろうか。

能力がバレようが死ぬなら別に問題は無い。

トップのこれがいなくなれば、あの声をかけてくれたおじさんや他の人たちも、全員とは言わずも救い出せるだろうか。

この情けない人生に意味を持たせることが出来るだろうか。

こんな枯れ枝のような命ひとつで救われるものがあって、私ももう楽になれるならそれで十分だろう。

「ったく、最後の俺様の優しさを無駄にしやがって。まぁいいさ、楽になんな」

向けられた刃物が振り下ろされる瞬間。

私が能力を使ってその手を止めた瞬間。

「ぼすううううう！！敵襲です！！！

し、白ひげ海賊団が攻め込んできました！！」

私の人生は後にも先にもこれ以上の奇跡はないと思う。