【銀魂】己の行く道 途切れた糸【土方十四郎】

好きな色　土方side ページ49

土方side


…Aの身体は、やはり暖かくて、小さかった。俺の腕の中に案外すっぽりと収まってしまうソイツは、本当に、こうしているとただの一人の女で。強がりを張り巡らせた虚勢をなくしてやれば、こんなにも健気で真っ直ぐな奴なのだ。誰にも曲げられない、誰にも折ることの出来ない、まるで研ぎ澄まされた刀のような芯を一本持っていて、そして、誰か一人を、こんなにも一途に想い続けている。

…強くて、弱くて、脆くて。


そんなコイツを、俺は護れるのだろうか。
そんなコイツの傍に居るなら、コイツの心にまで寄り添えるだろうか。


…いや、そんなことを幾ら考えても、答えなんて出はしないだろう。寄り添ってみなければ、見てみなければ分からないのだから。もうどの道、引き下がるつもりはない。


…ここにも、ちゃんと居ることを覚えていてほしい。


…お前のことを、想っている奴が居ることを、覚えていてほしい。


今はただ、それだけでいいと、俺は思う。


「…そろそろ、寝ましょうか…？」

土「…そうだな」


何処かよそよそしい感じながらもそう言葉を交わし合い、縁側から立ち上がった。今は何時なのだろう。ここに来てから随分時間が経ったような気もするし、そこまで経っていないような気もする。深まった夜に、冷たい夜風が吹き抜けていく。Aの長い髪を揺らしながら。


「ごめんなさい、付き合って貰っちゃって」

土「俺が勝手に来たんだよ」

「たまたまじゃなかったんですか？」


…痛い所をつかれ、だんまりを決め込むと、おかしそうに笑われた。


土「……、…じゃ、おやすみ」

「…おやすみなさ………あ、」


土方さん、と。背中を向けようとすれば呼び止められる。


「まだ質問、答えてませんでしたね」

土「…何の」

「好きな色」


あぁ、そういえばそんなこと言ったなと思いつつ、ソイツを見据えれば、口を開く。


「……黄色が、好きです」


…あったかい感じが、と。ソイツは少し微笑んだ。


土「そうか」

「はい、じゃ、おやすみなさい」

土「…おやすみ」


…そう言い合うと、Aは俺に軽く手を振ってから部屋に足を踏み入れていった。それを見送ってから、俺も自室へと歩を進めていく。


土「…黄色、か」


…Aのことを、一つ知ることが出来た。
些細なことだったがそれでも、何処か暖かな風が胸の中に吹いたような、そんな感覚がしていた。

続編です！！→←彼のせいで

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