【銀魂】己の行く道 途切れた糸【土方十四郎】

伸びる影 ページ32

土「……あ」


「ん、…あ」


…万事屋を跡にし、階段を降りきって道に出た所で聞こえてきた聞きなれた声。ちょっと驚いてついつい漏れちゃいました、みたいな小さな声を、私の耳はしっかりと捉えていて、視線を地面から前に向ければそこには、私を丸くさせた目で見据える土方さんが居て。思わず足を止めて数秒、お互いに固まった。


「…あれ、どうしたんですか土方さん」

土「あ、あぁ……まぁ」


…なんだこの人なんだか挙動不審だ。目が泳ぎまくっている。バタフライしている。誰か、誰か浮き輪を投げてあげてください。溺れています。そんなくだらなさ100%のアナウンスが頭を駆け巡りながらも、「どうしたんですか？」と問い掛ける。


土「い、いや、で、電池をな」

「電池？」

土「あぁ、電池だ」


なんだこの挙動不審の塊みたいなの。眉が寄っていく。それに、土方さんの手に電池が入ったビニールが見当たらないし、それに電池を売っているお店は、この辺りにはないはずだ。


「…土方さん、ビッ○カメラもドラッグストアも反対方向ですけど」

土「……え、そうだっけ」


えぇ、と頷いてみせれば、土方さんの視線がまたバタフライを始めた。土方さんは、他人の嘘を見抜くのは得意なくせして、自分が嘘をつくのは苦手だからな、と。そう思った所で、私はあることに思い当たってしまう。


「…土方さん、」

土「あ？」

「もしかして、迎えに来てくれたりしました？」


と。そう口にすれば、土方さんは冷や汗を噴き出した。「い、いや、通り掛かっただけだたまたま」と捲し立てているも、説得力は0だった。


銀『信じてやれよ、お前の仲間のこと』


…あぁ、そう。やっぱり、土方さんはこういう人。


「…ありがとうございます、土方さん」

土「…、」


…自然と溢れていたその言葉に、彼は面食らったような顔をして、気まずそうにしながらも、あぁ、と頷いてくれた。

…彼は、私が何者だろうと変わらなくて、いつだっていつも通りに迎えてくれて。そんな彼に、彼等に手を振り払われるのを恐れるあまり、私は彼等を信じることにすら怯えていた。


…実際、土方さんが、彼等が私をどう思ったか、それは分からないけれど。でも。


…信じていたいと、今強く思えた。


「帰りますか」

土「あぁ……あ、悪いちょっとビッ○カメラ寄る」

「…電池は本当だったんですね」


…茜色に染まり始める帰り道に、伸びる影が二つ。

今日も　土方side→←平気だっつの

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