【銀魂】己の行く道 途切れた糸【土方十四郎】

それを、　土方side ページ27

沖「…気になりやすかィ、Aさんのこと」

土「……」


…ボソリ。俺の隣にわざわざ並んだソイツは、何てことのないように、世間話を持ちかけるように切り出した。顔は俺の方を向いておらず、廊下の先を見据えているが、視線はこちらに向けられている。俺の顔色を窺っているかのようなそれに居心地の悪さを感じながら、俺は沈黙を貫く。その視線から逃れるように、冬に染まろうとしている縁側の景色を眺めている。

…赤や黄色の季節は終わりを告げ、白い季節が江戸に訪れようとしている。時間は俺達の歩幅なんて知らないまま、見向きもしないまま過ぎ去っていく。普通に歩いているつもりでも、置いていかれるのではないかという漠然とした不安が拭えない。


…過去に囚われながらも前へと進もうとして、けれど後ろを振り向かずにはいられないアイツ。

…そんなアイツを放っておけない俺は、季節に置いていかれているのではないかと思うことがある。そんな焦燥感が、俺の中には確かに存在している。きっと、俺がそうなのだから、アイツ本人は更にそう思っているかもしれない。


…気にならない、訳がない。

今だってそうだ。Aはまだ帰って来てはいなきのにも関わらず、俺の足は無意識のうちにAの部屋に向かおうとしている。それが無意味な行動だということを頭では理解しているのに、廊下を進める足を引き返させることはしない。ただただ無意味な歩を進めていく。


……俺は一体、どうしたいというのだろうか。


沖「……無言ってのは、肯定と取っていいんで？」

土「…それを、テメェに言う必要はあんのか」


…聞かれたからと言って、それをコイツに赤裸々に話す必要は、ない。口にくわえたタバコが燃え尽き、俺は携帯灰皿に吸い殻を突っ込んだ。


沖「……迎えに行ってやったらいいのに、そんなに気になるんなら」

土「……それを、」


……そうだ。そうしようとしなかった訳じゃない。

……Aに同行しようと思わなかった訳じゃない。


土「……それを、アイツは求めちゃいねェだろ」


…Aが求めているのは、そんなものじゃない。少なくとも、俺ではない。俺が傍に居ることを、Aが望んでいる訳ではないのだ。それなのに、俺がズカズカとアイツの領域に足を踏み込んで勝手なことをしたって、アイツのためにはならない。何一つ。


土「……アイツは、もっと別のもん欲してんだよ」


…俺ではなく、過去の面影を追い掛けている。


…ずっと追い続けた背中だけを、ソイツのことだけを求めている。

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