【銀魂】己の行く道 途切れた糸【土方十四郎】

最低なのは ページ22

私の言葉に目を丸く見開かせた銀時を見据えては、私は苦笑いを浮かべてしまう。そう、言葉通り、一番最低なのは、私なのだ。そう、思える。下ろした髪の先をいじりながら、「銀時がそんな顔しないで」と。そう呟けば、銀時は少しだけ苦しそうにしながら、口を開いた。


銀「…どうしてそう思うんだよ」

「…だって、そうでしょう？」


…深呼吸をするように深く息を吸い込んで、私は言葉を紡ぐ。これは、幼馴染みの銀時だから言えることなのだと思う。銀時や、小太郎じゃなければきっと言えないこと。私のことをよく知っている人だからこそ、言えることなのだと。案外簡単に銀時に口に出来るのが、その証拠だ。


「…私が晋助を諦めないから……銀時も苦しんでる」


そうじゃなかったら、「諦めたのかと思った」なんて、言わないよね。


「…晋助を諦められないまま、銀時も皆のことも困らせてる。晋助のことを救えなかった上に、今目の前にいる人達のことも苦しめてるんだよ」

銀「それはちが、」

「違わないよ」


…違わないんだよ、と。私は繰り返す。酷く、歪に掠れた声で。


「……私が、晋助を諦められたら、銀時にそんな顔させずに済んだのにね…」


ごめんね、と。呟けば、銀時は膝の上に乗せた手を握り締めた。視界にそれを捉えて、私は自分の足元に目を落とした。

銀時は、誰より私と一緒に居たから、私のことを多分一番知っているんじゃないだろうか。そんな銀時が、私の抱えるものについて、何も思わない訳がないのだ。私のことを一番知っていて、私のことを一番分かっているから、だからこそ、こんなに苦しんでいる。

…幼馴染みに、そんな顔をさせる私が、最低じゃないはずがない。


「…それに…、」

銀「……それに、何？」


…この事については、言うつもりがなかったのに。やっぱり幼馴染みパワーはすごい。ついつい気を許して、口を滑らせてしまっていた。

言え、と言わんばかりの視線に負け、観念したように答える。


「…銀時さ、」

銀「ん」

「…もし私が、真選組に居られなくなったら、ここに置いてくれる？」

銀「……は？」


そんな呆けた声を漏らしたソイツを笑えば、どういうことだ、と。


「…だってよく考えてみなよ、私、元鬼兵隊の人間なんだよ？」


そんな私が、皆にまた受け入れられると思う？と。

私は、思えない。どうしても。真選組の皆を信用していない訳ではない。けれど、嘘まみれの私を今まで受け入れてくれたこと事態が、奇跡的だったのだ。


……私は、これ以上を望めないのだ。


銀「…それ」


と、銀時は言う。

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