最低なこと ページ21
幼馴染みに対して遠慮しすぎなのではないかってくらいの態度に、私の調子が狂わされてしまいそうになる。口から生まれたような奴なのだから、いつものようにズケズケ物を言ってくれた方が、私としては落ち着く。まぁ、腹はたつかもしれないけれど。
そんな理不尽なことを思いつつ、銀時の言葉に耳を傾ける。
銀「……頭のリボン外してるのってよォ…」
「…、」
…おっと、そこに来たか、なんて。心の中ではおどけて見せるけれど、自分を誤魔化して見せるけれど、心臓だけは正直だ。ドクン、と嫌な感じで音をたてて、私の全身を響くように駆け巡る。喉の奥が塞がれたように、呼吸が苦しくなる。浮かべていた笑みも、強ばってしまった。
銀時はそれを見逃さなかった。見逃してはくれなかった。私の顔を真っ直ぐにじっと見つめながら、私からの言葉を待っている。これは、嘘をついても誤魔化しても、許してくれそうにないな、と。思わず渇いた笑いが溢れてしまった。
「……外したんじゃない、切れちゃったの、あのリボン」
銀「ぇ…」
「…風に飛ばされて、切れた片方はなくなっちゃたの」
窓から入ってきた風に飛ばされて、青空に浮かんで消えてった赤色のことを、数週間たった今でも鮮明に覚えている。文句のつけようもない秋の青空とリボンの赤が、見事はコントラストを放っていて。絵に描いたようだった。
…その景色を思い出すたび、伸ばした右手を見つめるたび、胸が苦しくなる。
……泣きたくなってしまう。
銀「……ごめん」
「銀時が謝るとか、意味が分からないよ」
アンタが謝んなバーカ、と。ケラケラ笑って見せるけれど、気まずそうに逸らされた幼馴染みの視線は戻ってこない。重たい沈黙が降ってきて、私達を気まずく包んだ。時計の秒針が進む音が際立って聞こえてくる。
銀「…ごめん」
「だから、銀時が謝ることじゃ、」
銀「俺、今から最低なこと言うわ」
…そう予告してから、銀時は続ける。わざわざ予告なんてするのだ。私は少し身構える。不安げに揺れているその目が、私を捉える。
銀「…アイツのこと、諦めたのかと思った」
「…」
…アイツ。それは、私が今頭に思い浮かべた人物で、合っていると思う。
「…諦められたら、いいよね」
…諦められたなら、どれだけ楽だっただろう。
…諦められたなら、どれだけ救われていただろう。
でも、諦められないんだ。どうしたって。
…諦めたく、ない。
「…銀時、最低なのは、私の方だよ」
私の言葉に、銀時は目を丸くさせた。
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ピピコ(プロフ) - 獅子の子さん» やったよ土方さん!!やっちゃいましたよ土方さん!!!しーちゃんのコメントで叫びそうになってるピー姉です(笑) キュンキュンしてくれたなら嬉しい!!あ、でもご飯はちゃんと食べてください(笑) これからも存分にキュンキュンしてくれるように頑張るね!! (2017年11月27日 22時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 蜜柑さん» 蜜柑さん!ありがとうございます!!土方さんが遂に始動です!!どうやってこれからアクションさせようか試行錯誤中ですが、かっこよく出来たらいいなと思ってます!これからも悶絶して頂けるようなものを書けるように頑張りますので、お楽しみ頂ければ幸いです!! (2017年11月27日 22時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - あ''ああああああああぁぁあぁ、よくやった土方ァ!! と心の中で叫びまくってるしーちゃんです。こりゃたまらんですよピー姉!! あんたって奴はどうしてこうも私の胸をキュンキュンさせるのが上手いんだい!? これから一週間飲まず食わずでも生きられそうだよ! (2017年11月27日 0時) (レス) id: d0488b3ee5 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - うわああああああああ( *´艸`)土方さんがついに言った!!((うるさくしてすみません笑)この先も楽しみです。更新待ってます! (2017年11月26日 23時) (レス) id: 6a812c0c50 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ヨッシーさん» ヨッシーさん!ありがとうございます!電池のとこは人気があって嬉しいです!下手な誤魔化しをする土方さんは完全に私得なんですけど、そこを通ってからのイケメン!みたいな(笑) これからの展開にご期待くだされば幸いです!頑張らせて頂きます! (2017年11月26日 23時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2017年11月6日 18時